【おすすめWebマンガ】水色の部屋(ゴトウユキコ) 〜 「母さんがレイプされた」。屈折した母子愛の暗黒青春譚

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日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!

ゴトウユキコ『水色の部屋』 ぽこぽこ連載

自意識過剰な思春期男子が主人公の暗鬱とした青春マンガといえば、押見修造のアニメ化作『惡の華』や、安達哲『さくらの唄』などの名作が思い浮かぶ。地方都市の閉塞感、孤独な学校生活、鬱積したリビドー……。そうしたモチーフをアラーキーの題字も風情豊かに、往年の邦画のような擬古的なタッチで捉え直して本作が描くのは、母子愛とないまぜになった思春期の性的屈折だ。

高校生の柄本正文は、教室ではイヤホン装備、昼飯も一人で食べ、幼なじみの少女・三吉京子以外とは友人付き合いのない眼鏡男子。密かに彼を苛んでいるのは、美しい母親・サホに対する複雑な愛情だった。かつてサホが男に強姦されている様を目撃して以来、その光景が脳裏から離れないのである。

季節は夏。あらわな白い肌に汗を浮かせ、朗らかに笑む母と一つ屋根の下の団地暮らし。いかにも母子家庭の母といった、内気な息子に向ける柔らかで打ち解けた風情と、異性としての存在感が同居したサホ。育ち盛りの息子に身長を追いぬかれた小柄な身体、会社の上司・渡辺に見せる女性としての顔、キャミソールの透けたワンピースの背中のボタンを息子に留めさせる無防備さ。永作博美がモデルだという童顔かつ母性あるサホは、ファンタジーではありながら誰しもに見覚えのある「母親としての女性」像として、生々しく読者に印象づけられる。

道ならぬ思いに葛藤し、幼なじみの京子とは曖昧な親しさを保つ正文。ふたりの間に割り入ったのは、社長息子の好青年・河野だった。外面の良さと行動力、正文とは正反対に今風の若者な河野は、京子と付き合い出すや否や、ハメ撮りを流出させて彼女をやり捨ててしまう。彼が次に目をつけたのは同級生の母親、サホにほかならなかった。

欲望のままにサホを組み敷く河野。再びの母親の被レイプを物陰から目撃した正文は、自らを縛り続ける呪わしい光景の再現を前にして、ただ手淫に耽る。父性嫌悪と表裏をなす自らの攻撃性への内省や、母親を傷つけたくないという思いが、最悪の形で帰結した一連の事件を境に、母と子の物語は破滅に突き進んでいく。

正文が夜な夜な見るのは、夏の夜明け前のうっすら水色の部屋で、誰かと足裏と背中をこすりつけ合うだけの、エロティシズムに彩られた夢。正文の性的幻想の対象とは、水色の部屋の女性とは果たして誰なのか?

性的葛藤に満ちた正文の暗黒青春劇は、漫画読み好きのするサブカル漫画と偏見するには忍びない迫真性がある。行動力の欠如で青春に躓いたごく平凡な男性諸氏、とりわけ、ロリコンとマザコンを同時にこじらせたダメなオタがじわじわとボディブローを食らうには十二分。昭和風エロスに酩酊するだけでは済まされない、原初的な性愛の呪縛を母と子双方の現実から描出する青春漫画の新たな傑作、ぜひご一読を。

『水色の部屋』掲載情報

・作者:ゴトウユキコ
・掲載メディア:ぽこぽこ(こちらからチェック!)

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