【今年の電子書籍ニュースまとめ後編】kindle vs 有象無象の中で市場はどうなっていくのか2

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2013年から本格的な普及と価格競争がはじまった電子書籍市場。「【今年の電子書籍ニュースまとめ前編】kindle vs 有象無象の中で市場はどうなっていくのか」では、2014年のニュースを通してどのような動きがあったのかを解説してきました。今回は、このまとめを踏まえながらよくある疑問点の解説からドワンゴ・川上会長の発言「ソーシャルリーディング」とはなにかを探っていきます。

また、最後に筆者なりの(夢のない)「2015年以降の電子書籍の将来」について予測していきたいと思います。

前編を読まなくても分かるように書くつもりですが、一応「【今年の電子書籍ニュースまとめ前編】kindle vs 有象無象の中で市場はどうなっていくのか」に目を通してもらえるとありがたいです。

まずは、前編の2014年のニュースのまとめから始めましょう。


 

  • 2014年電子書籍市場のまとめ
    1. amazon kindleストア一人勝ちが決定的に
    2. Apple iBook Store登場で即2位へ
    3. 日本産サービスの停滞と、楽天koboのセール攻勢も今ひとつ効果出ず
    4. ドワンゴがKADOKAWAと経営統合で本格的に電子書籍市場に取り組みはじめる

 

まずはなぜ低価格勝負で他ストアはkindleに勝てないかから考えていきます。

電子書籍ってなんであんなに大幅なセールが行われるの? 利益はどうなってる?

再販制という定額販売に縛られつつ守られている紙書籍と違い、電子書籍ではひんぱんに大幅な割引販売が行われています。書籍の再販制度と委託販売については、2014年5月の「出版3社がAmazonへの出荷停止を発表」を参照してもらうとして、そもそも「『スレイヤーズ』『パトレイバー』など、富士見ファンタジア文庫全巻合本フェア開催中!」のような、半額だとか70%オフだとかがどうやって行われているんでしょうか。

そして、そのセールではなぜ他ストアがkindleに勝てないのでしょうか。また、大幅安になることで出版社や著者はただでさえ少ない電子書籍印税をさらに削られているのでしょうか?

価格勝負では経済的規模があるストアが勝つ

ほとんどの場合、出版社はストアに一定の価格(大体50%~60%)で配信を卸します。そこから作者に印税などが支払われるわけですが、セールの場合、50%オフ以上もザラで計算が合いません。この時は、大体ストアが販売促進費用として不足分を補填しています。なので、割引時に本を買っても出版社・著者に入るお金は同じということになります(KDPなど除く)。amazonが完全にシェアを握ったら単価が上がる可能性がありますね。またKDPなどの個人出版の売れ筋は100円で、こちらは低価格固定か3万円などの情報商材化の二択になるでしょう。

販売促進費としてストアがお金を出しているということは、経済的余力・規模があるストアが最終的に勝つということです。楽天koboがセールを行い続けることができるのもバックに楽天という大資本があるからです。しかしワールドワイド大資本amazonが次世代のメイン商材に位置づけている本気にはかないませんね……。また、ストアとの契約では、たいていの出版社が似たような電子書籍の卸し方をしていることも関係があります。

出版社から見た電子書籍ストアへの書籍データの卸し方

価格競争で差が出にくい理由には、多くの出版社が電子書籍ストアに書籍データを卸す方法にも求められます。

前編ではだいたいkindleストアの現在のシェアは70%強だろうという話をしましたが、出版社が直接電子書籍ストアにデータを卸しているのもamazonのみという場合が多いようです。楽天koboにも直接卸している場合が次に続きますが、他の30%の中にひしめく電子書籍ストアといちいち全部直接取引してストア用のデータを作り、細かい帳簿管理をおこない、ストアごとの販売戦略を立てるなどは、一般企業の規模に比べて小さい日本の出版社の体力と余力につりあわないのです。既存の書籍を代理で各ストアの電子書籍形式に変え、販売管理をして報告し、支払いを行う代わりとして手数料を徴収する仲介業が中小の電子書籍ストアへの書籍データを扱っているのですね。

その辺りの事情の理解は、「スタートから1年、出版デジタル機構の現状と次なる構想を聞く (1/2)」や、「出版デジタル機構「パブリッジ」のスキームを考える」などの一連のまつもとあつしさんによる取材記事が役に立ちます。スゲェぜ。この電子書籍取り次ぎサービスは、国からの出資をうけた前述の公的資金も入った出版デジタル機構(パブリッジ)や、クリーク・アンド・リバー社など国内に数社あります。これらのサービスを利用して出版各社は電子書籍ストアに出品しているのです。なんか名称に川や橋とかが多いですね。数年前まで電子化無料でいくらでもやります!と各出版社に営業をかけまくっていたベンチャーは今どこに行ったんでしょうね……。その当時も電子書籍ストアは直接営業に切り替えてきて駆逐されていましたが。筆者もそのへんでうっかり一勝負しそうになってめんどくさくてやめたんですが、面倒力で命拾いした形です。

これらの取り次ぎサービスは、出版社の収益20%くらいを目安に手数料(レベニュー・シェア)を徴収して運営されています。また、契約内容も横並びな場合が多く、出版社に大きな利便性がある一方、ストア間の価格競争がしづらくなっています。卸し元が代理人でどこも一緒ですからね。amazon相手は昨年くらいからkindle担当に社員をつけてもなんとか商売になる(もしくは自社ノウハウをためると割り切れる程度の赤字で済む)ことが多くなったのか直接取引の出版社が多く、電子書籍で挑戦的なアタックをするならkindleというのが現実な選択になっています。既に他の販売チャンネルは出版社にとっても重要に見えてないんですね。

経済的規模と卸の手続きの問題から、日本の中小のストアではkindleに価格では対抗できないという図式が出来上がっているように思えます。次ページではそんなkindle一人勝ちの現状に挑むドワンゴ会長川上氏のインタビューから「ソーシャルリーディング」とはなにかを見ていきます。