80年代ファミコンマンガは常軌を逸していた! 〜 ファミっ子たちが夢中になった名作&珍作回想録

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先日お届けした「ファミコントリビア30」に続き、こんどは「ファミコンマンガ」の振り返りをご紹介します。荒唐無稽を地で行く珍作……とオトナになったいま読み返せばそう思うものの、少年時代は夢中になっていた読んでいた名作の数々。同じくレトロゲームライターの冨島宏樹さんに語っていただきました!

かつてファミコンが子どもたちに絶大な人気を誇っていた時代。その人気にあやかろうと、ファミコンをテーマにしたさまざまなマンガが登場する。当時夢中になって読みふけっていたそれらの作品群は、今読み返してみると……トンデモじゃん!

勢いですべてを納得させる

ゲーマーを主人公としたゲームマンガの元祖は、ご存じ『ゲームセンターあらし』。あらしが「炎のコマ」や「エレクトリックサンダー」といった必殺技を駆使し、ゲームを悪用する者たちを次々打ち破っていくというテンプレは、ゲームマンガの後継たるファミコンマンガでも受け継がれた。

例えば『ファミコンロッキー』の主人公・轟勇気の必殺技といえば1秒間にボタンを50連打する「ゲーム拳必殺五十連打」。「高橋名人の16連打でも人間離れしてるのに、50連打とかwwww」なんてツッコミを入れてはいけない。これさえ出れば一瞬でクリア&勝負を決めるほどの高得点を叩き出す必殺っぷりは、よくわからないがとにかくすごいと思わせるだけの迫力とインパクトに満ち溢れていたのだ。どう考えても連打は関係ない『ロードファイター』や『スーパーマリオブラザーズ』まで必殺技で押し通していた気もするが、こまけぇこたぁいいんだよ!

2015080611▲ゲーム拳必殺五十連打『ファミコンロッキー』拳法を応用し、両手で1秒間に50連打する、勇気の代表技。派生技も多く、腕が何本にも見えるほど高速で動かす“阿修羅乱れ打ち”や、衝撃波でボタンを連打する“超速衝撃連打(スーパーインパルスアタック)”などもある。(第3巻185ページより引用)

少年向けならではの、努力と友情もファミコンマンガでは外せない要素である。新たな必殺技やゲーム攻略法を編み出すために行う、四方八方から飛んでくるボールを落とすなどの常識を超えた努力。そして熱いファミコン対決を演じた強敵がときに仲間となる友情。それらはファミコン戦士たちも才能だけの人ではないと感じさせ、親近感を抱かせるのに十分なギミックだった。

そんなファミコン戦士たちの前に立ちはだかる相手も、とにかくスケールがデカい。それはもう無駄にデカい。ファミコン全米チャンピオンや、スポーツなど他の分野で道を極めた挑戦者は当たり前。ファミコンで世界征服をたくらむ悪の組織なんてのも、珍しい存在ではなかった。人類の命運を分ける局面さえも、ゲームをクリアできるかどうかが鍵を握っていたのだ。

「ゲームなんて何の役にも立たない」と言われ続けたファミコン少年の読者たちにとって、それは直球ド真ん中のストライクとなる激燃えシチュエーション。今見れば荒唐無稽としか言えないストーリーでも、ファミコンマンガには確かに夢が詰まっていた。

花盛りから滅亡へ作品群の栄枯盛衰

80年代当時、児童マンガ誌のほとんどにファミコンマンガがあったことは、それだけ読者たちのニーズにマッチしていたという証左である。コロコロコミックでは『ファミコンロッキー』『ファミコン少年団』、兄弟誌の別冊コロコロコミックには『ファミコンキャップ』。対してライバル誌のコミックボンボンでは『ファミコン風雲児』『ファミ拳リュウ』が2枚看板を張り、新興のわんぱっくコミックは『ファミ魂ウルフ』で追随。ほかにも読み切り作品やファミコンを題材にしたギャグマンガまで含めれば、数え切れないほどにあった。

2015080612▲『ファミコン風雲児』のゲームキャラと一体化する技で、ゲームに深く没入するファミコン戦士たちを象徴するものと言える。敵であるシャドウの刺客たちも当たり前のように使っていたので、この世界では基本テクのひとつだったのかもしれない。(第1巻116ページより引用)

しかし90年代に入ると、ハード自体が末期を迎えたファミコンマンガはもちろん、ゲームを超絶テクでクリアするゲーマーが主役となるマンガは、どんどん姿を消していく。家庭用ゲームだけにとどまらず体感ゲームやUFOキャッチャーまで勝負の題材とした『電脳ボーイ』、逆に対象ハードをゲームボーイだけに絞った『ロックンゲームボーイ』『突撃!ゲームボーイ』、対戦格闘ゲーム人気に乗じた『ゲームウルフ隼人』など90年代前半にも奮戦したゲームマンガはあったが、衰退の流れは止められなかった。

ゲームそのものが長大なストーリーや設定を持ち始めた時代、必要とされたのは作品自体のコミカライズだったのだ。そこにゲーマーを題材にしたマンガが入り込む余地など、もはや残されていなかった。

だが今になって振り返ってみると、ファミコンマンガはまた違った味わいを見せてくれる。かつて本気になって夢中で読みふけっていた当時とは異なるベクトルで、その荒唐無稽さは極上のエンターテインメントになっているのだ。一部の復刻版を除き、入手性は極めて低いファミコンマンガ。かつて高橋名人と並ぶヒーローとして存在したファミコン戦士たちの物語を、ここで再び思い返してみてほしい。

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