悪ノリが自由すぎる『監獄学園』、ヒット請負人・水島努アニメの魅力は振れ幅のデカさにあり!

2015090321公式サイトより

最新アニメをメッタ斬り(ときどき激賞)するレビュー連載、ここに登場! 今回は、『ガルパン』と『SIROBAKO』で“ヒット請負人”と呼ばれるまでになった水島努監督に迫る!

ピックアップアニメ『監獄学園(プリズンスクール)』

厳格な規律で知られる全寮制高校・私立八光(はちみつ)学園が女子校から共学へと転換した今年、5名の男子が入学した。彼らは欲望にまかせ、女子風呂覗きを画策。だが、男を追いださんとする“裏生徒会”に捕まってしまう。いったい彼らは、どんな懲罰を受けることになるのか!?

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2015年夏アニメは豊作

今年の夏アニメは、どれを見ても(めったに)ガッカリしない豊作だ。マンガ・ラノベ原作ものや日常×萌えなど手堅いジャンルを押さえつつ、その外側にも視聴者を広げようとする攻めの姿勢がある。

『うしおととら』は90年代の人気マンガを、当時の泥臭さや熱量のままにアニメ化。原作の太くて荒々しい線、熱血主人公とヒロインたちの懐かしいようで型にはまらない関係性、主人公の相棒でコワ可愛い妖怪・とらの魅力……スタッフが原作大好きじゃないと、こうガッチリとハマらない。

推理小説の大家・江戸川乱歩の小説を“原案”とした『乱歩綺譚』はほぼオリジナル作品だが、乱歩から猟奇や怪しさの魂は受け継いでいる。興味を持った相手だけ顔が見えて、そうでないモブは影絵に見える(人格を認めない)エゲつない主人公や、グロくてきれいな人間椅子のビジュアルも素晴らしく、『暗殺教室』で原作者も絶賛したアニメ化を手がけたスタッフだけに信頼できる。

個人的には『戦姫絶唱シンフォギアGX』が楽しくてたまらない。第1話から人命救助のために自然を大破壊しながら、水樹奈々&日笠陽子のコンサート!

と、第2話以降を考えずに全力投球。「防人語」という言葉が分かる人は絶対観ましょう。

オールラウンダー水島努

そんな夏アニメのなかで「これはひどい! ありがとうございました」と矛盾した言葉が出てしまうのが『監獄学園』だ。

5人の男子生徒が女風呂のノゾキがばれて校内の監獄入り、裏生徒会にムチムチいたぶられる……。むやみにエロくて高い画力の原作マンガを、カケラも自重せずにアニメ化。爆乳女子に踏まれる仲間をかばうと「なぜ止めた」と友情にヒビが入る原作のギャグをテンポよく再現し、空手少女が座りションを観られてうろたえるところで地面が濡れてる描写にも心を配る。

本作の監督が、アニメ制作の内幕を生々しくも感動的に描いた『SHIROBAKO』と同じ水島努さんという事実が、一番の面白さ。爽やかな青春群像のあと、俺も女王様の靴をなめたいと思わせる水島監督とは何者?

彼は、日本で最も忙しいアニメ監督の1人だ。特に2010年以降が凄まじく『おおきく振りかぶって~夏の大会編』や『侵略!イカ娘』『よんでますよ、アザゼルさん』『BLOOD-C』、少し中略して『じょしらく』。さらに『ガールズ&パンツァー』と『SHIROBAKO』のオリジナル2本を大成功させたオールラウンダーだ。逆に言えば、器用すぎて作家性が見えにくくもある。

全力でサービスする作家性

さくさく進むテンポの良さや、次々と新作を作り続ける基礎には、『SHIROBAKO』の宮森と同じく制作進行デビューだった水島監督の、鍛えられた時間管理のワザがある(まぁ、『ガルパン』の11~12話は延期になったが)。

血みどろの『撲殺天使ドクロちゃん』から、ブラックギャグの人だと思われていた時期もあったが、それは狭いとらえ方だった。『侵略!イカ娘』に下ネタがなかったのは、原作になかったから。つまり水島監督の作家性は、お客さんを見据えたサービス精神だ。それが誰にも真似できないレベルまで突き抜ければ、堂々とした個性だろう。『アザゼルさん』も原作がウ○コ塗れだから“盛った”わけだ。

水島監督が絵コンテを切った回はカット割がウマい。『ガルパン』第9話を例に取ると、敵味方の戦車がどう配置されているかを俯瞰→戦車上に置いたカメラからチームの動き→敵に砲撃→車内のキャラに切り替えというぐあい。1本のドラマをカット(各シーン)に割り、戦場で何が起こっているか、キャラの心情はどうかを描き、すぐさま戦車を写してキャラと重ねる。変に凝ったカメラワークより、視聴者に分かりやすい見せ方。『おおきく振りかぶって』も視点をこまめに切り替えながら、レンズ(見え方)を細かく変えて、「どこのポジションから見た視点か」を伝えていた。

最近の実写ドラマはセリフで説明しすぎる傾向にあるが、水島アニメは「見れば分かる」風にする。その上で、悪ふざけも原作尊重も、とことん「全力でサービス」。しかし、根っこには、どうしようもないクレイジーボーイ(『アザゼルさん』での無茶振りで、声優の小野坂昌也氏が命名)魂あり。お行儀のいい『SHIROBAKO』の次は悪ノリが自由すぎる『監獄学園』。この振れ幅のデカさも水島アニメの魅力!

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