【Web漫画】物件をめぐる理想と現実――“家”をテーマに女性の孤独を描く『プリンセスメゾン』がおもしろい

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日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!

池辺 葵『プリンセスメゾン』 やわらかスピリッツ連載

「賃貸と持ち家、どっちがお得?」なんて議論はよくされるけど、お部屋の内装や調度や設備など、生活の身の回りをより丁寧に整えて生きたい人にとって、お金云々の前に持ち家は一つの憧れ。それでも住宅ローンと購入資金の問題は重く、まさに一生の選択です。しかも夫婦や核家族ではなく、独身女性の物件購入とくれば、そこにはただならぬ人生のドラマが否応なく絡んでくる。

主人公は居酒屋で働く20代中盤の小柄な女性・沼越さん。モデルルーム見学の常連で、幸せそうなカップルやファミリーに囲まれてもなんのその、理想の物件をひとり探し求め、東京五輪を控えて浮つく都会の隅々までを歩き回る。日当たりの悪い五畳一間のアパートに帰れば、少しずつ積み上がる通帳の預金を確かめ、まだ見ぬ我が家を思い描く。

一人飲みが板についたモデルルーム受付の派遣の要さん、彼と別れて一人暮らしに空気を入れ替える亜久津さん、気丈なビジネスウーマンの勝木さん、名もなき老齢の漫画家女性。様々な単身女性の群像は、家の間取りや小物のディティールにその人となりが言葉なく表現され、自室で一人きりになるふとした孤独の瞬間の表情が切り取られていく。

小洒落たイタリアンを友人と囲むフードコーディネーターのレイは、寝床についた瞬間に「私、いつ死ねるんだろう」と思わずこぼして自嘲する。独り言の理由は定かならぬも、裕福な暮らしの中にふと吐き出された一言がただ真に迫る。素朴なデフォルメで描かれたキャラクターが、静かな空気感の中でなお光の表現と間で語り、徐々に解像度を上げて生身の人間の重みと鋭さを読者にすっと突きつけてくるのだ。

「マンション購入を目指す女性へのエール」という女性誌風のキャッチを越えた、家に一人でいる時間、孤独の座としての家、そうした人と生活の核心を静かに見つめ続ける視点は、女性だけでなく男性にも響くところが大きい。住宅、それと密接に関わる将来、自分自身のそれをも見つめなおす機会として出会いたい一作なのだ。

作者は『縫い裁つ人』でヒットした池辺葵。『どぶがわ』や『かごめかごめ』なども名作なのでぜひどうぞ!

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『プリンセスメゾン』掲載情報

・作者:池辺 葵
・掲載メディア:やわらかスピリッツもっとやわらかスピリッツ

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