メガテン原作者・西谷史が語る! 『デジタル・デビル・ストーリー 女神転生』と仏教・北欧神話・ラヴクラフト……

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仏教から北欧神話、ラヴクラフトまで

――『デジタル・デビル・ストーリー』シリーズと並行して、角川書店でも『神々の血脈』を書かれていましたが、こちらは?

西谷 やはり、角川書店に持ち込んだ企画です。ちなみに、『ウルティマ妖魔変』は、原作ゲームの日本語版新作が発売されるタイミングで角川書店さんからいただいたお話でした。

――ポニーキャニオンさんから『ウルティマⅣ』の日本語版が発売された時ですね。大々的に宣伝されていたことを覚えています。西谷さんの作品は、今で言うライトノベル的な文脈ではなく、新書判で刊行されていたエロありバイオレンスありで「伝奇ロマン」ジャンルに近いと思いますが、この方面で影響を受けた作品などはありましたか?

西谷 僕が世界で一番好きな作家がまさに、「伝奇ロマン」の走りになった半村良さんなんですよ。『太陽の世界』以外はたしか全部読んでいるはずで、それくらい好きな作家さんです。

――『女神転生』の「転生」は山田風太郎さんの『魔界転生』から来ているのかなと、当時は漠然と考えていました。そこのところ、いかがでしょう?

西谷 そちらは全く意識してませんでしたね。仏教の転生という概念自体が好きだったんですよ。あの少し後、90年代の頭くらいに転生についての話題が流行しましたけれど、85、6年頃にはまだ新鮮だった記憶があります。中学高校は仏教系の学校に通ったので、個人的な好みと、学校の影響の両方があったと思います。

――半村良さん以外で、影響を受けた作家さんは?

西谷 H・P・ラヴクラフトですね。いわゆる文学作品ではない物語で、最初に好きになった作家だったと思います。ちょうど東京創元社さんから『ラヴクラフト傑作集』(現『ラヴクラフト全集』)が出始めた頃で、非常に面白いな、と。

――『女神転生』でアーカムへの言及があったり、本棚にそちら系の禁断の書物が並んでいたりしましたので、何かしら影響を受けられたとは思っていました。黄泉醜女の描写などは、明らかにラヴクラフトの「インスマスを覆う影」などを意識されていますよね。

西谷 たしかにそうですね。当時はまだ翻訳も少なくて、原書を取り寄せて読んでみたりもしました。後に荒俣宏さんが手がけた創土社さんの『ラヴクラフト全集』(編集部注:ハードカバー版で、Ⅳ巻、Ⅰ巻のみが刊行)を読んで、「翻訳者の力って大きいな」と唸らされました。

――当時のライトな読者は北欧神話やエジプトの神話には馴染みが薄く、ロキやセトなどの神々は新鮮でした。悪魔召喚というテーマで、キリスト教系の悪魔ではなく敢えてロキやセトを選んだ理由は?

西谷 元々、世界各地の神話が好きでした。北欧がキリスト教化されていく中で、北欧の神々は悪魔と見なされるようになりました。そこを踏まえて、悪魔的な神であるロキを出すことにしたわけです。セトについては、以前からエジプトと出雲に何か関係があるんじゃないかと考えていたのと、出雲と言えば蛇という連想からでした。セトを蛇神として描いたのは、やはり愛読していたR・E・ハワードのコナン物の影響だったかもしれません。

――最初のゲーム版が日本テレネットさんから発売された経緯は?

西谷 OVAが先行で動いて、ゲームはそれと連動する形でしたね。徳間書店さんが主導で、何社かのソフトハウスに声をかけたんです。

――日本テレネット版のパッケージに「協力:アトラス」とあったので、てっきり、その後の作品とも企画が繋がっていると思っていました。

西谷 そのあたりはよく覚えていないんですよね。ただ、まったく独立した別の製品だったのは確かです。

――原作小説は、後に復刊ドットコム(ブッキング)で復刊されていますが、文章に手を入れられていたのはどのような意図があったのでしょうか。

西谷 実は、アトラスさんの携帯配信版でも手を入れています。最初の『女神転生』の執筆当時、知りあいの大学生たちの意見を聞きながら文体を若者向けにしました。でも、それは自分本来の文体ではないと思えたので、新しく出す度にどうしても気になって手を入れてしまうんです。

――最後に、現在のお仕事と今後の予定について教えていただけますか。

西谷 今は大学や専門学校で創作を教えています。ちょっとしたアドバイスで若い人の才能が爆発的に輝く瞬間というのがあって、それを見られるのが楽しいですね。創作から離れてしまったわけではなく、書いてみたい企画がまだまだあります。

西谷 史 nishitani aya

作家、大学・専門学校講師。電機メーカー勤務時代に小説を発表しはじめ、後に専業となる。代表作に『デジタル・デビル・ストーリー』(徳間書店)、『神々の血脈』『ウルティマ妖魔変』(角川書店)、『タイム・ダイブ1986』(リーフ出版)など。

 

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