【Web漫画】60年代左翼青年風の青春ロマン『マルクスガール』は、今読んでも異様なアツさでビンビンくるぞ!

manga20160518

日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!

山本夜羽『マルクスガール』 漫王web掲載

共産主義といえばソ連崩壊後、イデオロギーとしてはある種死に体で、今や女性声優さんが共産趣味を標榜したりと、相対化した上でそれにまつわる芸術・文化などをネタとして楽しめるようになった時代かも。そんな今の空気と重なりつつも微妙にズレるような、新左翼的革命志向の学生や前衛美術といった60年代風モチーフを取り入れた90年代学園青春マンガが漫王webで無料公開中です!

ゲリラ的な街頭壁画、革命を語る過激な言動、そして魅惑のナイスバディで文化人を挑発する芸術家女子高生・菅野清子。戦前のマルクスボーイ(マルキシズムにかぶれた青年)ならぬマルクスガールと渾名される彼女の作品に魅せられ、少年・伊藤栄は彼女のいる幸徳社高校に入学する。権威主義の名門美術部に向こうを張る清子の現代美術研究会に入部するも、謎めいた言動を繰り返す憧れの清子に翻弄され、栄は性と暴力と苦悩に満ちた青春の日々を送ることに。

幸徳事件に管野スガほか左翼関連名詞のもじりが至るところに散りばめられ、ずばりマルクス、ライヒにチェ・ゲバラ、学生運動風の反体制キャッチに満ちた部室、読売アンデパンダン展にアングラ演劇ポスター風のビジュアルなどなど、60年代の新左翼運動やその周辺文化への憧憬を感じさせる意匠やくすぐりがまず目を引く作品。そこに新宿ロフトプラスワンだの、第1話からヒロインが大学助教授の宮代真一(宮台真司)とセックスしたりだの、作品発表当時の90年代らしいアレコレもちらほら。直截に時代の気分と趣味嗜好がぶち込まれた内容の濃さがまず魅力です。

なかなかないほどストレートすぎる左翼漫画ですが、左派の思想や政治的主張を云々する内容ではなく、青年の無根拠な反体制的感情や思春期の鬱屈を左翼思想に託して表現せざるを得ない、という当事者的な感傷や悲哀が読み取れるような学園ドラマで、加えて知識人を茶化す目線、やや観念が先行した掛け合いの危うさなど、不器用な手付きと青臭さがむしろ魅力的。全共闘世代かと思いきや作者さんは60年代生まれで、「遅れてきた」人間の反時代的な憧憬と見ても切なさのある読み味です。

その感傷に共感はできなくとも、政治性を一旦措いた学生運動憧憬、それと同居した90年代のコテコテな絵柄とノリの学園コメディ、二重のイタくも気持ち良い感じに身に覚えのない読者でもチクチクさせられること間違いなし。図式的な作りと思い入れが喧嘩したようなガチャガチャしたお話の筋はご愛嬌。読者のほうも誠実かつライトに、共産趣味ならぬ新左翼趣味、みたいなものとして読んでみたい一本です!

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『マルクスガール』掲載情報

・作者:山本夜羽
・掲載メディア:漫王web

 

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