【Web漫画】半自伝的青春×エロ漫画コメディ『いちきゅーきゅーぺけ』は妙にアツい90年代おたく物語!

manga20160619

日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!

甘詰留太『いちきゅーきゅーぺけ』 金曜日はヤングアニマル掲載

今は昔の「エロさえあれば何描こうが自由」な三流劇画ブーム以来、様々な画風、作風、サブジャンルが生み出されてきた豊かな文化であるエロ漫画。なかなかその魅力を公に語りづらいジャンルだけど、比較的新しい世代の実作者が自伝的にエロ漫画への情熱を表現した作品が「金曜日はヤングアニマル」で無料公開始まってました!

時は1994年。長野の田舎に住むデブでメガネな受験生・中井は、エロ妄想だけが取り柄でノートにエロ絵を書き溜める毎日。奇跡的に東京の大学に受かって上京するも、エロ漫画趣味を誰にも明かせず大学にも漫研にも馴染めない。そんな彼の前に突然現れた漫研の桜町先輩は、褐色巨乳眼鏡なクォーター美人なのにエロ漫画が大好きな女性で……!?

宮崎事件の衝撃冷めやらぬ当時、クラスの日陰者として過ごすおたく少年の憂鬱や、思春期的なコンプレックスをエロ漫画に託す主人公。そんな薄暗い熱を秘めた内気なブ男の青春と、エロ漫画同志のヒロインをはじめとする漫研部員たちとのオタクコメディを軽快かつ力強い筆ぶりで描いた一作です。

具体的なエロ漫画作家や作品の固有名詞が大量に登場するのはもちろん、アニメ雑誌の投稿コーナーでのファンコミュニケーション、桜玉吉のイラストが目印の専門店「まんがの森」、ビデオデッキ普及途上時代の自主アニメ上映会、通信カラオケの元祖X2000でアニソン飲みなど、90年代当時の周辺おたく文化まで含めてエロ漫画に賭ける青春を描くところなんかは、同じ大学漫研モノでも『げんしけん』ほか先行作品とは異なる読み味となるポイントです。

主人公たちが熱くエロ漫画の魅力を語る当時の時代背景としては、80年代のロリコンブームから表現の多様化・細分化をたどり、森山塔ほか作家性の強い描き手が現れ、ペンギンクラブ、ホットミルク辺りの美少女系エロ漫画文化が隆盛。ところが宮崎事件で規制強化の声が高まり成年コミックマークの自主規制が始まるも、かえって成年コミックが漫画読みの中で一定の市民権を得て安定生産が始まって……この最中か前後ぐらいのタイミングになるのでしょうか。

太い主線で何事もぱきっと演出する筆致と読ませるコマ割りで、若い読者にも分かりやすく当時の文化や時代の肌感覚を示した一本。同世代はもちろん、後追いの漫画ファンでも色々参考になる作品ですよ!

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『いちきゅーきゅーぺけ』掲載情報

・作者:甘詰留太
・掲載メディア:ヤングアニマル嵐、金曜日はヤングアニマル