【おすすめWebマンガ】有害都市(筒井哲也) 〜 表現規制問題に真っ向から挑むエンタメ意欲作!

0206yuugai

日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!

筒井哲也『有害都市』 となりのヤングジャンプ連載

何かと巷で俎上に載せられる、マンガの有害図書指定と表現の自由をめぐる問題。児童ポルノ禁止法や青少年健全育成の論点とも根深く関わり、とにかくデリケートで取り扱いづらいテーマです。それをなにかと悪者にされがちなマンガ家の側から描くとなれば、何か読者への啓蒙的な意味合いが強くなったり、そういう方面へのミョーなバイアスがかかったりしたヘンな作品になってしまうのでは……? そんな心配を吹っ飛ばしてくれるのが、筒井哲也の『有害都市』。程よいバランス感覚でこのテーマがうまく調理され、骨太のエンタメに仕上げられた一作です。

東京五輪を控えた2019年、有識者の意向ひとつで有害図書を指定できる新法が成立。猥褻・暴力表現のむやみな排斥へ向かう時世の中、とあるマンガ誌に掲載されたマンガ家・日比野の新連載作『ダーク・ウォーカー』も、元文科省大臣から直々の抗議を食らう。

雑誌は自主回収となるが、「表現を抑えたら、このマンガの面白さは伝わらない」と、日比野は本誌連載の道を捨てて、幾分かは自由に表現できるWeb連載への移行を決意する……。

その『ダーク・ウォーカー』の内容とは、食人の衝動にかられる食屍病の蔓延を描くパンデミックアクション。日比野の熱意で作品は人気を博すが、他作家への謝罪めぐりで日比野はかつて有害指定を喰らった有名作家・松本と対面。

創作が現実にもたらしうる影響の重さを受け止め、作家の創造性を捨てた、完全分業制の新しいマンガの作り方を提示する松本を前に、それでも自分は自己の表現を追求していくべきなのかと悩む日比野。

編集者、ベテラン作家、新人、それぞれの視点から表現問題にまつわる様々な側面や人間模様が立体的に描き出されていく。

「知らぬ間に世界が変わり果てている」。本編のディストピア的状況と、パンデミックで荒廃した劇中劇世界とが重なりあい、「このままではいずれ現実もこんな世界に……」という暗い予感を匂わせる巧みな演出も。

作者の筒井哲也氏は自作『マンホール』が長崎県で有害図書類指定を受けており、当事者としての危機感は作中描写に高いリアリティと、押し付けがましくないバランスの良い読み味を与えている。

とはいえ、本作は煩わしい現実との関連抜きに、「如何にして表現すべきか?」という普遍的なテーマでぐいぐい引き込んでくれる。ひとつのマンガとしての面白さで陰鬱な現実に立ち向かう、冷静かつアツい筆致が魅力的な著者渾身の意欲作なのだ。

『有害都市』掲載情報

・作者:筒井哲也
・掲載メディア:となりのヤングジャンプ
・専用アプリAndroid(バックナンバーも閲覧OK)

ほかのおすすめWebマンガをチェック!