幕末カノン砲ファクトリーの中心『韮山反射炉』は昭和の鉄骨フレーム姿こそ美しい

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2015年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。中でも「軍艦島」がキラーコンテンツとして有名ですが、ほかにもワンダーな産業革命遺産がたくさんあることはご存知でしょうか。その中から静岡県にある「韮山反射炉」をご紹介しましょう。週末、伊豆の温泉を愉しみがてら見学に行ってみません?

現存する国内最古級の反射炉

nirayama05▲鉄骨フレームで耐震補強された韮山反射炉。高さ約15.7m。実際に見学すると、小ぢんまりとした印象を受ける。当時の反射炉で現存するのは、韮山と萩のみとされる。

東京・お台場には、かつてペリー艦隊を横浜まで追い返した砲台(台場)が8基ほど造られていた。その建設責任者が、江戸時代の幕臣で伊豆韮山代官の江川太郎左衛門英龍。そして、設置された大砲は、佐賀藩か幕府直轄である伊豆の韮山反射炉で鋳造されたものがほとんどだ。

江川英龍は、1840年(天保11年)のアヘン戦争で、大国・清がイギリスに負けたことに危機感を覚え、砲台設置や海軍創設など海防政策をかねてより進言していた。この韮山反射炉も、英龍が築造の責任者だが、残念ながら建造途中で亡くなったため、息子の英敏が後を継いで1857年(安政4年)に完成させた。

nirayama04▲鉄製24ポンドカノン砲のレプリカ。品川台場に配備目的で製造された。

「反射炉」と聞くと、太陽光を鏡か何かで集めてその熱で鉄を溶かすタイプの溶鉱炉かなと思う。実際は、燃焼室で石炭などを燃やした時の熱を、壁や天井で反射させて集め銑鉄を溶かすものだ。熱源や反射材は異なるが、構造的には似通っている。溶けた銑鉄は型枠によって、円筒形の砲身に変わる。反射炉のそばを流れる川の水を利用し、水車の力で40日もかけて穴を開けたという。気の長い話である。砲身自体は、鉄製18ポンドカノン砲の場合、鋳造開始から完了まで約11時間かかった。実際に稼働していた近世の反射炉としては、現存する唯一のもので、非常に貴重なものだ。

nirayama02▲反射炉は、連双2基4炉からなる。

nirayama03▲炉体部。燃料を入れる焚口(右)と材料となる金属を入れる鋳口(左・いぐち)を有する。

外側は伊豆石、内部は耐火レンガを使用。一見網タイツのように独特な、洒落たデザインの煙突だが、それは昭和の時代の鉄骨フレームによる補強によるもので、本来はフレームなしのシンプルなものだった。今では、「この姿じゃないと韮山反射炉ではない」と思えるぐらい違和感がない。伊豆長岡駅を挟んで、反対側の位置にある伊豆長岡温泉には、赤線跡の素敵な昭和の建築が多少残っている。併せて訪れるのもいいだろう。

nirayama06▲1909年(明治42年)修理時の様子

アクセス

  • 伊豆箱根鉄道駿豆線伊豆長岡駅から徒歩で20分、タクシーで5分。東名高速沼津ICから国道136号線下田方面へ車で30分。
  • 住所:静岡県伊豆の国市中字鳴滝入268
  • TEL:055-949-3450(韮山反射炉 管理事務所)
  • 開館時間:9時〜16時30分
  • 休館日:12月31日、1月1日
  • 入館料:一般100円

文・写真|ワンダーJAPAN編集部