鉄骨マニアも震える存在感『住友奔別炭鉱立坑櫓』は栄華と悲劇を語り継ぐワンダーな炭鉱遺産だった

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今回のワンダーJAPAN物件は北海道三笠市奔別町にある『住友奔別炭鉱立坑櫓』。当時「東洋一」とうたわれる巨大な立坑櫓を備えた最新鋭の炭鉱でした。閉山直後に起きた爆発事故の傷跡もなまなましい遺構ですが、炭鉱のシンボルたる立坑櫓のそびえ立つ姿からは見る者を圧倒するチカラを感じます。

以下、文・写真|ワンダーJAPAN編集部

住友奔別炭鉱立坑櫓(北海道三笠市奔別町)

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三笠市街から芦別市方向へと車を走らせると、街並みにニョッキリと顔と突き出した巨大な櫓(やぐら)が見えてくる。鉄骨を神社の鳥居のように組んだだけの無骨な造形に、誇らしげに掲げられた「奔別」の文字。このデザインでTシャツを作ったら、漢字好きの外国人に売れるかもしれない。

三笠市奔別町にあるこの住友奔別炭鉱立坑櫓は昭和35年に建造された。櫓本体の高さは約51m。その直下には直径6.4m、深さ750mの立坑が延びている。地上と地下を結ぶ昇降装置には、人員・資材・石炭を同時に輸送できる最新システムが採用され「東洋一の立坑櫓」「あと100年は採炭できる」といったうたい文句で注目を集めた。しかし爆発事故や坑内環境の悪化、そして石炭から石油へというエネルギー転換の波に飲み込まれ、昭和46年に炭鉱は閉山。その後、坑道の密閉作業中にも爆発事故が起こり、5人の尊い命が失われた。

2016102419▲高さ30mほどの巨大な檻のような鉄骨の構造物。40年近く風雨にさらされ放置されていたため赤錆に覆われているが、崩れる気配はない

周囲に比較対象がないため遠目に見たときはそれほど大きく感じなかったが、近づいていくとその巨大さに圧倒される。ところどころに赤錆は浮かんでいるが、基本的には力強く安定した印象。建物前部には赤錆に覆われたジャングルジムのような構造物があり、鉄骨マニアでなくても身震いしてしまうほどの存在感。かつては全体がトタンで覆われていたが、最後の爆発で吹き飛ばされたため、すべて撤去されたということだ。両翼に延びる建物には屋上庭園のように草が繁り、建物全体のイメージに神秘的な彩りを添えていた。

2016102420▲櫓をくぐるように敷かれたジェットコースターの軌道のようなレール。爆発の影響で鋼材がねじ曲げられ、行く手を阻んでいた

2016102421▲レールの下にはキャタピラのような機材も。かつては立坑櫓自体がひとつの巨大な機械であったことを感じさせる

比較的原形をとどめている外観に比べると、内部の損傷はかなり激しい。凄まじい爆発のエネルギーを物語るように、ねじ曲げられた鋼材や傾いたまま放置されている操作盤のついたカーゴ、地下へと続くコンクリートの怪談や床には亀裂が走り、一部は崩壊してポッカリと穴が開いてしまっていた。

2016102422▲櫓の裏手には、地中深くへと延びる立坑内を昇降するケージの操舵室が今も残されている。妙に近未来チックな風貌が、SF好きの心をくすぐる?

2016102423▲櫓の下は現在も爆発の傷跡が色濃く残されていた。地面には細かい瓦礫が散乱し、ひしゃげた鋼材が目につく。右側の地下へと続く階段の先は崩落しており、極めて危険な状況らしい

閉山後、36年間放置されているその姿は、まるで、閉山そして爆発事故という二重の悲劇を後世に語り継ぐ墓標のようだった。

アクセス

  • 道央自動車三笠ICから、道道116号線を三笠市街・芦別方向へ、車で約15分。
  • 住所:北海道三笠市奔別町
    ※敷地内の立ち入りには許可が必要。


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