それでもインフルエンザ予防接種を受けたほうがいい理由
秋も深まり、インフルエンザが流行の兆しを見せはじめています。ワクチンの接種はお済みですか?
すでに報道されていることですが、今年のワクチンの製造量は、去年の使用量を下回る見通し。もし、予防接種を行う予定があるなら、早めにかかりつけの医院に相談しておいたほうがいいでしょう。
一方で、世間には「インフルエンザの予防接種は効果がない」と、ワクチン接種を拒否する人もいます。ですが、本当にそうなのでしょうか?
そこで今回、東京目黒区にある五本木クリニック/五本木クリニック 美容皮膚科の院長・桑満おさむ先生に解説していただきました!
アドバイザー|桑満おさむ
横浜市立大学医学部、1986年卒。横浜市立大学医学部病院 泌尿器科に勤務後、1997年に五本木クリニックを東京都目黒区に開院(泌尿器科・皮膚科・内科・形成外科、美容皮膚科・美容外科)。医療に従事する傍ら、ブログを通じて医療にまつわる疑問やウワサを検証した情報も精力的に発信している。
インフルエンザ予防接種の本当の意味
▲厚生労働省のYouTube「MHLWchannel|インフルエンザ一問一答 みんなで知って、みんなで注意!」より
毎年この季節になると、インフルエンザワクチン接種反対論が浮上してきます。特に大きいのが「インフルエンザの予防接種をしても効果がない」という声。しかしこれは誤りです。
まず、知っておいてほしいのは、「予防接種をしてもインフルエンザには感染する可能性がある」ということ。しかし、だからといって「感染するなら接種は意味がない」という主張は的外れです。ここからが重要なのですが、ワクチン接種の本当の効果は、以下の2つ。
- 感染に気がつかないくらい症状が出ない「不顕性感染」で済むことがある
- 感染しても、すでに抗体があるので、重症化することが少なくなる
というわけで、インフルエンザのワクチンには、重症化を防ぐという効果があるんです。
そして、疫学的に言って、予防接種というものは受けている人が多ければ多いほど意味があります。インフルエンザが流行しにくくなり、予防接種をしていなかった(できなかった)人がインフルエンザにかかるリスクも下げることができるんですね。
たとえば妊婦さんは、抗インフルエンザ薬は勿論のこと、解熱剤さえ服用できません。妊娠中は免疫力が落ちますので、インフルエンザに感染した場合は重篤化する傾向がありますし、これから生まれてくる赤ちゃんも障害が出る可能性があることが報告されています。
また、インフルエンザワクチンに対してアレルギーを起こしたことのある人や、アレルギーを起こす可能性のある人は、無理に予防接種をするべきでありません。
ですが、多くの人が予防接種を行っていれば、そういった人たちを守ることにもつながるのです。
今年のインフルエンザワクチンの種類と効果
今年のインフルエンザ予防接種に日本で使用されるワクチンは、
- A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
- A/Hong Kong(香港) /4801/2014(X-263)(H3N2)
- B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
- B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)
と、A型2種類、B型2種類の4種類が成分になっています。
ただし、CNNの報道によると、このうちH3N2株に対するワクチンは、すでにインフルエンザが流行しているオーストラリアにおいて、有効性が低いことが分かっているようです。(参照:CNN|豪州のインフル感染、前年の2.5倍に 北半球も深刻化か)
とはいえ、オーストラリアで予想外に流行しているB型に対してはワクチン接種は効果がありますし、A型に対しても全く効果がなかったわけでもありません。やはり今年も、ワクチン接種が予防法の第一選択であることに変わりはないのです。
ちなみに、インフルエンザは飛沫感染、つまりツバや鼻水を介して感染が拡大します。ゆえに、感染した人はマスクをするなどの注意を払っていただきたいところです。
【おまけ】うがいはインフルエンザ予防に効果がなかった!
日常生活におけるインフルエンザ予防としてメジャーなのは「うがい」「手洗い」ですよね。
ですが、うがいについては、実はあまり効果がないとの研究結果が出ています。首相官邸サイトの「(季節性)インフルエンザ対策」ページでも、
※ うがいは、一般的な風邪などを予防する効果があるといわれていますが、インフルエンザを予防する効果については科学的に証明されていません。
と書かれています。(参照:首相官邸|(季節性)インフルエンザ対策)
▲正しい手の洗い方(「首相官邸|(季節性)インフルエンザ対策」より)
その一方、インフルエンザ予防として重要視されているのが手洗いです。前掲の首相官邸サイトにも正しい手洗いの方法がイラスト入りで掲載されていますので、ご覧くださいませ。
<関連リンク>
・首相官邸|(季節性)インフルエンザ対策
・厚生労働省・MHLWchannel|インフルエンザ一問一答 みんなで知って、みんなで注意!
※本コラムは「五本木クリニック院長ブログ」より一部を転載し、加筆したものです。