健康的に年をとっている人たちの共通点とは?

現代人の生活といえば、クルマや電車での移動に座りっぱなしのデスクワーク。日々の生活で、体はなまる一方です。運動しなきゃと思っても、慌ただしさにかまけて、なかなか習慣にできない日々。

そんなとき、ランニングウェアを身にまとった白髪のおじさま、おばさまたちが黙々とジョギングしている姿がまぶしく見えたりして……。やっぱり、健康的に歳を取るためには、運動をした方がいいのでしょうか?

もちろん、運動した方がいいんです! しかも、歳を取ってからはじめたとしても、効果があります。

そんなことが書かれたイギリスの研究論文について、東京目黒区にある五本木クリニック五本木クリニック 美容皮膚科の院長・桑満おさむ先生に解説していただきました!

 

アドバイザー|桑満おさむ

横浜市立大学医学部、1986年卒。横浜市立大学医学部病院 泌尿器科に勤務後、1997年に五本木クリニックを東京都目黒区に開院(泌尿器科・皮膚科・内科・形成外科、美容皮膚科・美容外科)。医療に従事する傍ら、ブログを通じて医療にまつわる疑問やウワサを検証した情報も精力的に発信している。

運動は、高齢ではじめても健康にはかなり有益

「BMJ Journals」のサイトより

高齢になってからでも、運動をすると「health ageing」(健康加齢とでも訳すのか?)に対してよい結果を招くという内容の論文が、イギリスの医学誌「BMJ」に掲載されています(Taking up physical activity in later life and healthy ageing: the English longitudinal study of ageing)

この論文は、調査開始時に63.7(±8.9)歳の無病だった男女を8年にわたって追跡し、運動をしなかった人に比べて、運動をした人がどれくらい「health ageing」だったかを調べたものです。

ただし、「health ageing」って、きっちりとした定義がないのが微妙は微妙です。この論文においては、調査期間中に以下の4項目が揃っていると「health ageing」が良好であるとしていますが…。

  • 慢性疾患に罹っていない
  • 認知症が発生していない
  • 身体機能に障害が発生していない
  • メンタル的に問題が発生していない

つまり、「健康的に歳を取っている」「日常生活に問題なく生活ができる」「今すぐ生命を左右する持病がない」状態であればOKとしているんですね。

運動をすると健康的に年齢を重ねられる

論文のPDFより引用。中程度の運動をしていた人のオッズ比は2.67、強度の運動のしていた人のオッズ比は3.53となっている。

さて、この論文の結論はどうなっているのかというと、

  • 調査条件を満たした人は全調査対象1万1,000人(調査期間8年)のうち、3,454人
  • 3,454人中、健康だったのは665人(19.3%)
  • 中程度(自己申告で週に1回程度)の運動をしていた人は運動をしない人より、オッズ比2.67で健康であった
  • 強度(自己申告で週に2回以上)の運動をしていた人は運動をしない人より、オッズ比3.53で健康であった

とのこと。ちなみに、「オッズ比」というのは、ちょっとわかりにくいですが、「関連の高さ」を示す数字です。単純に「何倍」ということではありませんので、お間違いなきよう。

まあ、ここまでは予想できる範囲でした。ですが、この研究で面白いのは、

  • 最初は運動をしていなかったけど、途中で運動を開始した人が健康である効果はオッズ比3.37

という部分です。

論文のPDFより引用。途中から運動するようになった人(Become active)のオッズ比は3.37だった。

つまり、もともと運動嫌いの人でも、なにかの理由で運動をするようになれば、健康的に年齢を重ねられるということになります。

とはいえ、決して無理はいけませんよ!

主治医として診療させていただいた患者さんが定年退職をすると、いきなり「健康オタク」になる例が多いです。

今まで仕事に追われ、運動さえもほとんど行なわず、付き合いで飲みたくない酒を飲み、ストレスのためか喫煙に走り、時簡短縮のために移動はほとんど車だった人が、いきなり禁酒・禁煙は当たり前、さらに毎日のウォーキング、ジム通いをはじめるのです。

「目標を数値化して、それを達成する」と会社でしつけられた影響なのか、運動においても無理をしがち。「毎月100キロウォーキングする」という目標を設定すると、とにかく目標を達成しようとして足腰を痛めるオッサン続出という流れになってしまいます。

私が患者さんに生活指導を行う場合の大原則は、「無理をしない」「継続できる簡単なものから」「周りに迷惑をかけない」というもの。その人に合った運動というか身体活動を取捨選択し、できる範囲で継続することが一番大事です。

その上で「周りに迷惑をかけない」こと。オッサンってなぜか、自分が新しいことを始めると周りの人を誘い込もうとする性質があります。また、今まで出勤ぎりぎりまで寝ていた人がいきなり「朝型人間」に変身することで、本人は良くても、家族の生活のリズムが崩されてしまう場合があるんです。

というわけで、運動は、いつ始めたとしても健康面では有益と言えます。今からでも決して遅くはありません。が、くれぐれも無理はしないでくださいね。自分のためにも、そして周囲のためにも。

<関連リンク>
PDF「Taking up physical activity in later life and healthy ageing: the English longitudinal study of ageing」

※本コラムは「五本木クリニック院長ブログ」より一部を転載し、加筆したものです。