クトゥルー神話における「日本初」を研究家に聞いてみた
「クトゥルー神話」はH・P・ラヴクラフトにより創造され、数々の作品を通じて語り継がれ、発展してきました。この架空の神話は、日本においても多くの作品に影響を与え続けています。それらの作品を集め、クトゥルー神話研究家として数々の本を執筆している森瀬繚氏に、さまざまなジャンルにおける「日本で最初のクトゥルー神話作品」を教えてもらいました!
目次・コンテンツ
日本人が書いた最初のクトゥルー神話ものの小説は?
→ 高木彬光『邪教の神』(1956年)
チュールーという神の彫像にまつわる事件を描いた、高木彬光による、神津恭介シリーズの短編「邪教の神」という説がある。1956年には、短編集『邪教の神』が東方社から刊行されている。
ただし、作者がラヴクラフトないしはその周辺作家の作品を読んでいたという物証は今のところ見つかっておらず、偶然似た名前になったのかもしれないという意見もある。
現在でも比較的手に入れやすいものとしては、学研M文庫の『クトゥルー怪異録』に収録されている。
ラヴクラフト作品が初めて日本語訳されたのは?
→ 西尾正による翻案作品『墓場』(1947年)
1947年、探偵小説雑誌『真珠』の11・12月合併号に、「墓場」と題する西尾正の小説が掲載された。
ペンダアという英国人の陳述という形で、彼の友人トオマス・スティヴンが荒廃した墓地で遭遇した怪異が語られる。墓地の入り口で待ちかまえるペンダアに、電話を通して聴こえてくる切羽詰まったスティヴンの声。最後に、何者かの声が「バカ! スティヴンは死んだよ」と告げる――。
わかる人にはわかるが、「ランドルフ・カーターの陳述」の翻案。日本語訳された最初のH.P.ラヴクラフト小説だと思しい。
この作品は西尾正『西尾正探偵小説選Ⅱ』(論創社|2007年3月)に収録されている。
日本で初めてクトゥルー神がイラスト化されたのは?
→ 世界の怪獣大百科(勁文社|1982年)
関西のファンダムにおいて「コロサス・コーポレーション」を主宰していた竹内義和が企画し、ゼネラルプロダクツ(ガイナックスの前身)も協力している剄文社の『世界の怪獣大百科』には、「クトゥルフ」や「ナイアルラトホテップ」「ダゴン(記事内容は〈深きものども〉だったが)」などクトゥルー神話の神々がイラストつきで解説されている。
奇怪な怪獣・妖怪のひとつとして、それとは気付かぬ内にこれらのワードを刷り込まれた子供達が大量に生み出された。
クトゥルー神話ネタの出て来る最初の国産コンピュータゲームは?
→ PC用ソフト『ヴォルガード』(dB‐SOFT|1984年)
惑星トライダルの高機動可変戦闘システム、通称ヴォルガードと、謎の侵略者たちの戦いを描く横スクロールSTG。
実は、敵の戦闘艇や機動兵器の名前がソロモン70柱の悪魔たちと『指輪物語』、そしてクトゥルー神話から採られていて、「アザート」「ナイアル」「ヨグソート」「ラトテップ」「ルウクル」などが存在する。
ただし、各機種版ともパッケージとマニュアルに敵キャラの一部しか名前が載っていない。
クトゥルー神話のだいたいすべてがここに!『All Over クトゥルー -クトゥルー神話作品大全-』
「クトゥルー神話」はH・P・ラヴクラフトにより創造され、数々の作品を通じて語り継がれ、発展してきた。本書では日本国内で発売された古今のクトゥルー神話作品を網羅すべく、1,300作以上を解説! 小説のみならず、コミック・映画・ゲームなどもカバーし、現在に至るまでの神話体系の流れを総攬する。
長年クトゥルー神話を研究してきた著者の集大成!
森瀬 繚 Leou Molice|ライター、翻訳家。TVアニメやゲームのシナリオ/小説の執筆の他、各種媒体の作品で神話・歴史考証に携わる。クトゥルー神話研究家として多くの著書があり(近著に『クトゥルーの呼び声』星海社刊)、2008年にはニューイングランド地方を訪れている。→ Webサイトはこちら
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