先発薬のほうが無難? ジェネリック医薬品の知っておきたい現実

医療費削減が叫ばれる中、使用を推奨されているのが「ジェネリック医薬品」です。病院でもらう処方箋にも「ジェネリック医薬品を希望する」という欄がありますよね。

このジェネリック医薬品、「新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、品質、効き目、安全性が同等」とされています。しかし実は、ジェネリック薬が必ずしも「新薬と同等」と言えるわけではないことをご存知ですか?

一体どういうことなのか、ア理科シリーズでおなじみ、『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』の著者である亜留間次郎氏に、詳しい解説をお願いしました!

 

解説|亜留間次郎

薬理凶室メンバーとして「アリエナイ理科ノ教科書」シリーズの執筆に携わる謎の怪人。医学、物理ネタから世界情勢の裏事情まで、得意分野は多岐にわたる。単著に『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』がある。Twitter

ジェネリック医薬品の成分が新薬と異なる理由

そもそも、「ジェネリック医薬品」(または「後発医薬品」)とはなんでしょうか? 日本ジェネリック製薬協会の説明では、

ジェネリック医薬品は、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、品質、効き目、安全性が同等なおくすりです。(日本ジェネリック製薬協会より引用)

と書かれています。しかしながら、日本ジェネリック製薬協会は同時に「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」も公開しているんですね。実際には、必ずしもジェネリック医薬品が先発医薬品と同等というわけではないんです。

日本ジェネリック製薬協会「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」より。「日本ジェネリック製薬協会で独自に調査したもの」であり「すべての効能効果等の違いを網羅したものではない」ことに注意。

なぜこういうことが起きるのかというと、

  • 特許が切れたからといって、先発薬を開発したメーカーが企業秘密である製造工程を公表するわけではないため、ジェネリックメーカーが独自の製法で製造している
  • 主成分の特許は切れていても、副成分の特許が残っているので、その部分が異なる

というケースがよくあるからです(先発薬メーカーが成分・製法を許諾した「オーソライズド・ジェネリック」もあるが、その数はまだ少ない)。それゆえに、「ジェネリック薬に変えたら効かなくなった」ということもありえるわけです。

「先発品と同等」ではなかった例

2007年に「後発医薬品の適正使用と医薬品添加物に関する研究 YAKUGAKU ZASSHI 127(12) 2035―2044 (2007)」という論文が発表されました。これは、睡眠鎮静剤(ハルシオンなど)とそれらの後発医薬品を用いて、マウスに対する催眠作用の比較及び主成分含有量と血中濃度を比較検討したもの。

後発医薬品の適正使用と医薬品添加物に関する研究 YAKUGAKU ZASSHI 127(12) 2035―2044 (2007)」より。矢印は、先発薬に比べて作用に有意差があることを示している。

この論文では、Triazolam(トリアゾラム)の含有量が先発品のハルシオンと同等であったにもかかわらず、作用が有意に弱い後発薬があったことが報告されています(あくまでも動物実験の結果であり、人間にそのまま当てはめることはできませんが)。

また、2008年には切迫流産・早産治療薬であるウテメリン(先発薬)のジェネリックに不純物が入っていて、問題になったケースもありました。主成分にも添加剤にも問題はなかったのですが、製造工程で加熱処理時にリトドリンに亜硫酸イオンが付加して変質したものが不純物として混入していたのです。その後、各メーカーで改善が行われ、現在流通しているものについては、不純物含有量に問題ないことが確認されています(「第2回ジェネリック医薬品品質情報検討会で品質課題が指摘されたリトドリン塩酸塩注射液の再試験結果報告」を参照)。

医師の7割が不安を感じている

平成27年(2015年)に行われた行政改革推進会議「歳出改革WG重要課題検証サブ・グループ(第6回)」では、医療関係者へのヒヤリングでジェネリック医薬品について以下のような意見が出ていました。

  • 後発医薬品のメーカーは医薬情報担当者(MR)が少なく、来る回数も少ない
  • 中小メーカーが製造しており、安定供給に懸念がある

新薬メーカーは企業規模が大きい(新薬開発には何百億円もの資金が必要)ぶん、人材が豊富でサポートもしっかりしています。それに比べると、ジェネリックメーカーは規模が小さく、サポート面も不十分になりがちなんですね。それゆえ、

医師の7割も、漠然としてであれ品質に不安を感じているのが現状(「歳出改革WG重要課題検証サブ・グループ(第6回)」配布資料「資料4 これまでのヒアリングで出された主な意見」より引用)

と、医師たちもジェネリック医薬品に対して不安を抱いていることがわかります。

先発薬とジェネリック、どっちを選ぶ?

日本の薬はかなり厳しく管理されているので、重大な不良品が流通する可能性は極めて低いでしょう。もちろん、先発薬と同等といえるジェネリック医薬品もたくさんあります。

ですが、効果に違いのあるものが存在していることは、ここまでに見てきたとおり。そして、一般患者はその良し悪しを判断する知識を持ち合わせていません。ゆえに「先発薬」と「ジェネリック医薬品」を選べるならば、値段は高くても「先発薬」を選択するほうが、現状においては無難なのです。