世界がおどろいた「音波消火器」はわりとお安く作れる!(ただし卓上サイズに限る)

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今年3月、アメリカのジョージメイソン大学の学生が「音」を使った消火器を発明したというニュースが話題になりました。これは従来の消火器と違って水も消化剤も使わないので周囲を汚さず、かつ電気で動くので消火器のようにすぐ使えなくなったりしない画期的な消火器と言われてましたね。

音を使った消火器というのは意外なようであちこちで「スゴイ!」と取り上げられていましたが、一部の物理に詳しい人達はこう思ったのではないでしょうか、「なかなか面白いね。でも、音で火を消すのってよくある話じゃない?」と。

そうです、実は音で火を消すというのは物理の実験ではわりと前からあることなのです。さらには火を消すだけではなく物体を浮かすことまで可能だったりするんです。

よくある話、それほど難しくはない……ならば作ってみようではないか! ということで東京・秋葉原近辺で手に入る材料で小型の「音波消火器」を製作してみました(手軽に手に入る材料で作れるなんて、ある意味……お得! と強引にこじつけ)。

2015061513こんなふうに火を消すマシーンを作る

なぜ音で火が消える?

まずそもそも音が火を消す原理について説明しましょう。普通、火というものはただ燃えるモノと火があればどんどん燃えていくというわけではありません。

燃えるモノ(燃料)と火(熱源)と空気中の酸素、それに空気が循環して燃料と酸素が混ざり引火するという流れ。この4つの要素が必要となります。

普通の消火器は水で直接火を消したり、二酸化炭素で酸素の供給を絶ったりという直接的な方法ですが、音の場合は最後の「火が続くのに必要な流れ」に作用します。

音が空気の振動だということは今では常識ですが、音波消火器は強力な音=強力な空気の振動を発生させて火全体を強く揺さぶってこの流れを乱し流れを不安定にさせることで燃え続けることを邪魔して火を消すのです。

元の動画では音に低周波を使っています。これは周波数が低いほど空気の振動の幅が大きくなり、火を揺さぶる効果が高いからですね。

ちなみに、周波数が高いと揺さぶる力が弱くなり、逆にむしろ空気と程よく混ぜあって火を強めてしまうかもしれません。

音で火を消す実験の話ですが、これは「音の共振(共鳴)」の実験として知られているもののひとつ。ロウソクを中に入れたコップに対し、ある特定の周波数の音を当てると、コップ中のロウソクの炎が消えるという実験です。

管やパイプ、コップやボトルといった口の空いた容器は皆それぞれ特有の「共振周波数」という音を持っています。その周波数の音を外から受けると強く響いたり、また空気の流れとしてエネルギーを与えられるとこの周波数の音を強く発したりします。

リコーダーなどの笛や空き瓶の口を吹くとボォーという音がするのがまさにこれですね。

この共振周波数は容器の形や大きさで決まっていて、共振を起こしている時の容器の中では強い音が発生しています。

コップの中のロウソクを消す実験では、コップを共振させることでコップの中に強い音を発生させてそれによってロウソクを消しているのです。

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(coiler製音波消火器の動作ムービーは3ページに)

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