任天堂が勇者ロトを埋葬していた――ファミコンにまつわるムダ知識30!
任天堂がファミコン用ソフト『スーパーマリオブラザーズ』を発売してから今年で30年! 振り返れば、我が人生はファミコンとともにあった……なんてしみじみ。そんな30周年を記念して勝手に集めてみましたよ。「知っておいても役に立たない……けど! 知っておきたいファミコンのムダ知識“30”連発」!!
※ムダ知識まとめ人:ファミカセをコンプするレトロ系ゲームライターの冨島宏樹氏
目次・コンテンツ
【01】ファミコンの商標はもともとシャープが持っていた
「ファミコン」といえば任天堂の登録商標……と誰もが思いがち。実際、現在はそのとおりなのだが、そうなるまでにはちょっとした紆余曲折があった。1983年10月、シャープが「ファミコン」の商標を娯楽分野で出願したのである。
ファミリーコンピュータが「ファミコン」で定着することまで任天堂が予測していなかった……からかは定かでないが、ともあれ後に任天堂はファミコンの商標をシャープから譲り受けることに。
ちなみに、任天堂とシャープはゲーム&ウオッチを共同開発したり、シャープから引き抜かれた技術者の上村雅之がファミコンの開発責任者になったりと、古くから関わりが深い。後にシャープからはファミコン内蔵テレビ「C1」(※1)やツインファミコン(※2)など関連マシンが発売され、ファミコン発売後も良好な関係が続いたようだ。
すんなりと商標が渡されたのも、この2社間なら納得がいく。さらに余談だが、実はファミコン発売からさかのぼること3年前、すでに「ファミコン」という商標はシャープが家電分野で出願している。ただしハードの略称と同じ名前のグリルオーブンレンジ「ファミコン」の発売に合わせてのもので、こちらはまったくの偶然だった。
※1 「C1」は、シャープがファミコンの商標登録を出願した1983年10月発売。これに合わせての出願と考えられるが、正式名称は「マイコンピュータテレビC1」で、ファミコンという言葉は含まれない。
※2 発売時は「なぜ任天堂ではなくシャープが発売を!?」と疑問を持った人も多かった。
【02】ファミリーベーシックはベーシックじゃないBASIC
続いてもシャープが絡むファミコン知識。ファミコンでプログラムが打てる「ファミリーベーシック」は、通常のBASICとは違う文法で作られていた。これは、ハドソンがシャープのパソコン・MZ-80k用に作ったプログラム言語「Hu-BASIC」をもとにしているため。ハドソンは初期にファミリーベーシック用ゲームプログラムが入ったムック本「少年メディア」も発売していたが、それは自分たちの作った周辺機器を盛り上げるためだったのだ。
【03】ファミコンの初期バージョンはボタンが四角
▲これ全部、四角ボタンのファミコン。箱もある。
ファミコンのABボタンといえば丸ボタンでおなじみだが、初期バージョンの本体では四角だった(画像をGoogleでさがす)。しかし四角ボタンは、押した後すぐにゴムが戻ってこなかったり、劣化が激しかったりと問題が多かったため、すぐに変更されている。当時、四角ボタンのファミコンを持っているということは「本当の初期に買った」という証だった。ちなみに、本体とコントローラをつなぐケーブルがグレー(通常は黒)という違いもある。
【04】光線銃とロボットは海外では勝利の象徴
日本では失敗したファミコン周辺機器の代表格とされる、光線銃とロボット。しかし、海外版ファミコン、NES(Nintendo Entertainment System)の場合は事情が異なる。NESは廉価版と豪華版の2バージョンが発売されたのだが、廉価版には光線銃が同梱され、豪華版にはさらにロボットが必ず付属していたのだ。
これはATARI2600の大失敗で冷え込んでいた海外の家庭用ゲーム市場に乗り出す際「さまざまな遊び方ができるゲーム機」と打ち出すことで、購買意欲をそそろうとしたのが理由とされる。それが功を奏してか、NESは海外でも大人気となり、任天堂の名を世界に知らしめた。ある意味、光線銃とロボットは海外の家庭用ゲム市場を復活させる救世主となったわけだ。
【05】任天堂無許可のアダルトゲームが存在する
ファミコンでソフトを発売するには、任天堂とのライセンス契約が必要……だったのだが、その慣習に反旗をひるがえしたメーカーがあった。その名はハッカーインターナショナル。ラインナップは任天堂許諾の正規ソフトでは絶対不可能な、アダルト要素の強いものばかりだった。『ボディコンクエスト』『エミちゃんの燃えろ野球拳』などタイトルだけで、どのような内容か窺い知れるというものだ。
後期には任天堂に真っ向からケンカを売る、マリオシリーズのパロディ『ミスピーチワールド』を発売したりと、話題は絶えないメーカーだった。後にこのメーカーはPSに正規ブランドとして参入。マップジャパンの名で活躍している。
【06】他メーカーの勇者たちを埋葬するお遊び
制作者のお遊びだろうか。ファミコンでは一部ゲームで、他メーカー作品の主人公が埋葬されているネタが見られた。口火を切ったのは任天堂『リンクの冒険』。サリアの街にある墓を調べると「ユウシャ ロト ココニネムル」とメッセージが表示されるのだ。これが『ドラクエ』の勇者ロトを意識していたことは間違いないだろう。
これを受けて初代『FF』では、エルフの街に「リンクここにねむる」と書かれた墓が登場。さらに『ケルナグール』に、このお遊びは伝播する。『FFⅡ』の主人公が埋葬されたと思われる「フリオニールここにねむる」の墓が現れた。こんなブラックなネタが許されたのだから、おおらかな時代である。
【07】任天堂純正の周辺機器にホルスター
『ワイルドガンマン』にはベルトとホルスター、光線銃、ソフトが同梱の『ワイルドガンマンセット』が存在する。この中のホルスター(Googleで画像をさがす)は後に単品でも発売。しっかりと任天堂純正品の型番(HVC-006)もつけられている。
【08】フィットネスマシンとファミコンの融合
1988年にブリヂストンサイクルが開発した「ファミコンフィットネス」(Googleで画像をさがす)。これはファミコンとエアロバイクをつなぐことで、健康管理ができるというシロモノだった。ムダ知識15の通信アダプタもつなげれば、電話回線経由で運動量を分析してくれるサービスまであったのだ。ブリヂストンサイクルは何とかファミコンを自転車と結び付けようとしていたらしく、自転車屋にカスタム自転車を組むためのソフト『テーラーメイド』(非売品)を配布した過去もある。
【09】ドラマが『マリオ』をリスペクト
1986年に放映された、長渕剛主演の『親子ゲーム』がそれだ。劇中にはプレイ画面が出てくるだけでなく、重要キャラの少年の名前も麻理男(マリオ)。第1話のタイトルからして「スーパーマリオになりたい」である。
【10】『スペランカー』もドラマに出演
2013年に放映された『ビブリア古書堂の事件手帖』の第3話には、『スペランカー』がレアなゲームソフトとして登場する場面があった。箱・説明書はもちろん、ステッカー付きの美品だった点にこだわりを感じさせる。