今期は何見る? アニメライター(ボンクラ)が選ぶ注目の2016年冬アニメ7選! ~ 『僕だけがいない街』から『紅殻のパンドラ』まで

この異世界ファンタジー、色々ヤベエぜ! 『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 炎龍編』

manga1224公式ホームページより)

STORY

東京・銀座に突如異世界への門が出現! オタク自衛官・伊丹は第三偵察隊を率い、門の向こうの異世界「特地」を探索。エルフのテュカ、魔導師のレレイ、黒ゴス姿の神様ロゥリィなど異世界美少女てんこ盛りで、超スケール自衛隊ファンタジーの幕が開く!

寺田:いきなりですが異世界なのにピニャ・コ・ラーダ皇女というネーミングはスゴいですよね。『赤髪の白雪姫』の西洋風ファンタジーなのに一人だけミツヒデみたいな面白さがあります。

久保内:スゴいよね。ケモミミ好きな伯爵とか、実は領主や貴族に地球からの移住者が結構いたって設定かも。あらかじめ転移者がオタ文化ライクにしといてくれた異世界、手っ取り早くてイイね! というのはさておき、一期は謎の面白さで夢中になったので二期も超楽しみです!

寺田:なろう文化に慣れない一般視聴者には謎すぎるというか、自衛隊がワーグナーの「ワルキューレの騎行」をかけながらヘリの機銃で現地人をミンチにする話のインパクトしか残ってない! 問題作ッスね。

久保内:ご多分に漏れず口を半開きにして見てたね……気になったので原作もちょっと読んだんですよ。感想はちょっと秘密にしておきますけど、京極尚彦監督はエラいなあと思いました!

寺田:ヘビーなろうユーザーの久保内氏でも難解な部分があった様子。京極監督は『ラブライブ!』も色々力技なお話を終始大真面目に演出していて、本作も変に茶化さず原作に忠実に、逃げずにキッチリ変な部分もやりきってますよね。

久保内:真面目に作りこむ方向が独特! 問題の虐殺シーンとか国会証人喚問の茶番劇って、フォトジェニックだけど、原作そのままで一般視聴者にお出ししたら政治性の面で完全アウトなんですよ。普通に作ったら「主人公の主観の選択としてこの時はこうするしかなかった」とか、政治的にセーフなものに処理するところを、京極監督は原作のヤバげな地の文とかセリフだけカットしてシーン自体はやるという作り方。変な政治性がある部分はマイルドに処理するのでなく機械的に排除! 面倒は省いてとにかく戦争&勝利というオタが見たいシチュの気持ちよさがメインみたいな編集方針を感じるんだよね。

寺田:唐突にスゴいシーンがブチ込まれて狼狽してるうちに話が分からなくなる現象はそのせい!? 『ラブライブ!』のディレクションもアイドルの成長譚に必要な手続きは最低限に、「葛藤があります!」と力強く宣言したあと女の子の可愛いシーンメインで推移して「なんか吹っ切れました!」という持って行き方ですよね。

久保内:葛藤シーンを丁寧に描いても、どこかで観た退屈なストーリーの焼き直しになりそうだしね。成長譚の葛藤のバリエーションってそんなに無いし。だからカットする! というのはキャラがお話の奴隷にならないっていう意味で新しいかも。『GATE』に戻ると、そもそもあの虐殺シーンは映画『地獄の黙示録』のパロディで、ベトナム戦争での米軍の総攻撃時に親ナチスとされるワーグナーの曲をかけるという皮肉なのに、その文脈を無視して無批判に自衛隊カッコイイに利用したと問題になった。その無批判ぶりも本作の特徴だけど、でも普通にみるとちゃんとピニャ殿下失禁寸前で現地人が自衛隊の兵器ヤバすぎと慄くあのシーンは、現地人目線で自衛隊が米軍じゃなくナチス的な何かにしか見えない! 結果的にパロディの意図を汲んだようにも見えるんですよ。その中で「あなた方はどこの国の軍隊ですか?」「自衛隊です」のドヤ顔がひときわ意味不明なインパクトを与えてくれる上に、そんなストーリーとエルフのお風呂シーンが同じ重みで扱われ、オタ的に分かりやすすぎるシーンしかないのに全体としては主張が黒塗りなこの酩酊感! こう書くと嫌いなように見えるけど本当に大好きで楽しみですね……。

寺田:意図が見えないorそもそも無いがゆえのエモさって、難しいけどアニメの醍醐味ですよね。ええと、二期はドラゴンと戦うみたいだし、きっとより王道なエンタメファンタジーになってると思います!

 

豪華キャストの本格落語アニメ、名作となるか!? 『昭和元禄落語心中』

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STORY

舞台は昭和の落語界。刑務所に服役中のチンピラ・与太郎は、慰問に訪れた落語家・八雲が演じた演目「死神」に心を打たれ、出所後すぐさま八雲に弟子入りする。ところが八雲の元には、彼と因縁ありげな養女・小夏が暮らしており……

寺田:漫画読みの間で話題になった落語漫画のアニメ化です。石田彰、山寺宏一、林原めぐみなど、キャスティングのカッチリしすぎ感……!

久保内:これでも落語という題材の難しさを考えると結構ドキドキする! 声優さんもかなりの覚悟だと思います。石田彰のキャラ、老人なのに女演技に定評がある落語の名人です。老人なのに色っぽい芸姑に見える名人芸って、演技するにも作画するにもほぼイジメですよ!?

寺田:落語監修に林家しん平さんがクレジットされてますね。『さんかれあ』の畠山守監督なら大人向けのしっとりしたフィルムにしてくれそうだけど……そんなにヤバい?

久保内:落語といえば蕎麦を啜るあの身振り手振りなどでお馴染みでしょ。蕎麦を啜ってないのに啜ってるように見える作画って……ヤバくね? 落語名人キャラのスゴさをそうした超難度の演技や日常芝居で、最低数回は真正面から表現しなきゃいけない。俺がアニメーターならゾッとするわ! 声優さんも最早その職分を超えた演技を要求されるハズ……『マクロスF』のシェリルみたいに落語パートだけ本職が演じる、って形でもいいとすら思います。

寺田:これこそ「こんなサービスめったにないんだからねっ」と一言、歌丸師匠が出演すべきアニメでは? ということを『落語天女おゆい』ファンは思いました。『じょしらく』ファンもどうぞ。私からは以上です。

久保内:声優による落語演技なら『おゆい』最終回の後藤沙緒里の落語シーンはマジでやっててなんか凄いから観たほうがいい! 確かやってたよね?

寺田:やってたやってた! あれかなり練習されたんでしょうね、懐かしいなあ……ということで、『落語天女おゆい』の最終回を憶えているほど落語愛たっぷりの久保内氏がお送りしました。

久保内:逆に愛を疑われるね? ともあれ、不安要素は山積みだけど期待感もスゴいドキドキの一作。女性も男性も楽しめるテイストで、ベテラン声優のヤバすぎるガチの演技も確実に見れるハズ。とんでもない傑作になる可能性、ありますよ……!

『紅殻のパンドラ』ほか2作も……いっとく?