このゲームマンガがすごかった! 原作大改変コミカライズの世界(“SFザナドゥ”ほか)
かつて「ゲームマンガ」はまさに百花繚乱、多種多様な作品が咲き乱れる熱いジャンルでした。
無限の鉱脈の如きネタの宝庫だったゲームマンガを振り返る本コーナー、「激闘! 児童マンガ誌編」「ファンタジーRPG編」と続き、第3弾は「大改変! ゲームコミカライズの多様性の世界」をみやも氏にご紹介いただきました!(編集部)
目次・コンテンツ
大胆に改変!? ゲームコミカライズの多様性
一口にゲームのマンガ化と言っても、原作に独自の世界設定を加えたものもあれば、もはやキャラを借りてきただけというくらいに改変されたものまでさまざま。コミカライズの自由さを味わおう!
SFを盛り込んだ『ザナドゥ ドラゴンスレイヤー伝説』
著者:都築和彦 掲載誌:角川書店全1巻
「ドラスレ」シリーズの第2弾『ザナドゥ』は、当時ファルコム社員だったイラストレーター都築和彦によってマンガ化された(1987年に単行本刊行)。
白魔法と黒魔法の勢力がせめぎあう世界で、聖剣を手にした記憶喪失の若者フィーグと王女リエルが戦乱を平定する。原作は純然たる剣と魔法のファンタジーなのだが、マンガ版では、主人公の設定に、我々の現実に近い機械文明の世界から異世界へ転送された兵士だったという素性が盛り込まれた。
魔物の軍勢に多脚ロボット戦車が砲撃をぶちこむ! そんなファンタジーとSFをまたぐスペクタクルがワクワク感を与えてくれる。本作をベースにしたOVAも制作された。
▲SF兵器でファンタジー魔物をオーバーキル!(『ザナドゥ ドラゴンスレイヤー伝説』より)
“メディア転校生”としての『エヴァ』『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画』
著者:高橋脩 掲載誌:月刊少年エース(KADOKAWA)
アニメ原作じゃないの? とお思いかもしれないが、さにあらず。2004年に発売されたPC用ゲームのタイトルを掲げた本作は、ゲームマンガの範疇だ。アニメ → ゲーム → マンガという変遷こそ、メディアミックスの醍醐味と言えるだろう。
原作は題名どおりシンジくんを育成するSLGで、育て方によりルート分岐する。マンガ版は、平和な学園生活を送る碇シンジが転校生の綾波レイ、幼馴染のアスカと繰り広げる三角関係を描いた学園物のルートに準拠(旧アニメ終盤で描かれたアレね)。愉快で明るい『エヴァ』を見たいニーズは根強く、アニメが新劇場版になっても、貞本版『エヴァ』が完結してもまだ連載継続中。もう10周年の長寿作に。
▲素直で定番なラブコメ展開だが、『エヴァ』でそれをやることにありがたみがある。(『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画』第1巻より)
広くて深いコミックアンソロジーの世界
ゲームのコミカライズは、数巻にわたって物語を紡ぐ作品がある一方で、数ページの短編を詰めたアンソロジーも多い。
「あのキャラとこのキャラがこんなかけあいをしたら……」といった二次創作的な関心を惹くコミカルなネタが主で、たとえば巨大ロボアニメ大集合の共演ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズのような、キャラクター数が多い群像劇と相性がよい。
また、マンガの形式としては4コマもポピュラー。エニックスの『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』が柴田亜美や衛藤ヒロユキといった人気作家を生んだように、アンソロ分野は軽妙な内容とは裏腹に、存在意義は重く大きいのである。
左)『スーパーロボット対戦オリジナルジェネレーション2 コミックアンソロジー』(一迅社) 右)『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』(エニックス)
原作の新たな供給源・ソーシャルゲーム
“基本無料”のソーシャルゲームが台頭している昨今。PCのブラウザゲームや携帯電話・スマートフォンでヒットしたソシャゲがマンガ化される例も多くなってきている。
超有名ゲームとなった『艦隊これくしょん』は複数のストーリー物、4コマ、プレイレポなどマンガ作品を平行して量産中。さらに、派生作ながら独自の一大コンテンツとなった『アイドルマスター シンデレラガールズ』、女性化武将物『戦国コレクション』、学園恋愛物『ガールフレンド(仮)』など、めぼしいところはいずれもコミカライズが行われている。既存の家庭用ゲームに並ぶ新しい原作供給源として、ソシャゲの流れは今後も要注目だ。
コンシューマゲームはシナリオが長大化した結果、マンガ化では内容の省略など引き算になりやすいのに対し、ソシャゲは文芸面が簡素でユーザーの想像に任せる手法が多く、マンガ版でも物語や人物の情報を足し算しやすい。この特徴は、むしろレトロゲーム時代のマンガ化に近いのが興味深いところだ。
左)『艦隊これくしょん ─艦これ─ いつか静かな海で』(画:さいとー栄、作:田中謙介、協力:C2機関 / KADOKAWA) 、右)『アイドルマスター シンデレラガールズ あんさんぶる!』(千葉サドル / スクウェア・エニックス)
左)『小悪魔王伝 戦コレ!』(小西紀行 / 小学館) 右)『ガールフレンド(仮) クロエ・ルメール編 ~クロエと日本と未来のトビラ~』(アズマサワヨシ / KADOKAWA)