【レトロ家電】少年たちが熱狂したソニーのBCLラジオ『スカイセンサー』って結局何がすごかった?
かつて日本で巻き起こった「BCLブーム」。昭和40年代後半〜50年代に青春時代を過ごした方(主に男性、つまり現在はオジサン!)なら懐かしい響きを持った言葉でしょう。BCLラジオのカタログを眺めるのが至福の時間だったあの頃……。ちょっとそんな時代を懐かしみながら、当時BCLラジオNo.1メーカーだったソニーの『スカイセンサー』シリーズを振り返ってみたいと思います!
ソニー製BCLラジオ『スカイセンサー』を振り返る
『スカイセンサー』『クーガ』『トライエックス』……40代以上の男性なら即座に反応してしまうこのワード。知らない人のために説明しておくと、これらは昭和40年代後半〜50年代に発売されたBCLラジオのこと。ダイヤル、スイッチ類がところ狭しと並べられた、やたらとメカニカルなそのルックスに、当時の少年たちはまるでショーケースのトランペットにかぶりつくニューオーリンズの少年のような羨望のまなざしで、メーカーカタログを見入ったものです。
現在、これらのラジオは生産されていませんが、ネットオークションや秋葉原のレンタルボックスなどで中古品が高値で販売されています。当時は買えなかったかつての少年たちが、少しでも状態のよいものを求めて買い漁っているのです。
今回はそんな中から、常に業界を牽引したナンバーワンメーカーであるソニーの『スカイセンサー』にスポットを当ててみたいと思います。
▲スカイセンサー5500のメーカーカタログ。「ソニー技術の新しいかたち」とあるように、当時のラジオにはそのメーカーの技術力の粋が集められた。
革新的な5500のデザイン
▲スカイセンサー5500。この縦型ボディに多くの少年が魅了された。
スカイセンサーの歴史は1972年(昭和47年)に始まります。シリーズの第一弾ICF-5500(スカイセンサー5500)が発売されたのです。 このラジオのすごさは、実は性能ではなくデザインだといわれています。従来ラジオはテレビと同じように部屋の定位置において聞くものでした。そのため、安定する「横に長い形」になるのは必然だったわけですが、ここでソニー開発陣のコペルニクス的転回がさく裂。5500はなんと縦型のデザインに刷新されたのです(※わからない人のために無理やり例えると、横に長い冷蔵庫を発売するくらいの斬新さです)。
一見安定しない形状ですが、これまでの「据え置き」ではなく、気軽に持ち運べるというコンセプトであったため「縦型」がマッチしました。現に5500にはカバーと肩掛け用の紐が付属してきます。これは「電波が少しでもよい場所へアクティブに移動せよ」という、ソニーからのメッセージとも言えます。
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時代にマッチしたベストセラー機・5800
▲スカイセンサー5800。数十万台売れたと言われているベストセラー機。
画期的な縦型デザインは多くのラジオ好き少年のハートを鷲掴みにしました。ところが5500は先にも触れたように技術的にはそれ以前の11シリーズと大きな差はありませんでした。このとき海外の短波放送が徐々に人気になりつつある時代で、5500では少々物足りないと感じる人が多かったのです。
常にユーザーの「ほしい」を形にしてきたのがソニー。5500のたった1年後の1973年に、28MHzまで受信でき、短波を3バンドで切り替えできるスカイセンサー5800(ICF-5800)を発売。当然のごとく、瞬く間に大ヒット。ベストセラー機となりました。
1970年代後半は、BBC(イギリス)やドイチェ・ヴェレ(西ドイツ)、ラジオ・オーストラリア(オーストラリア)など、海外からの日本語放送が大人気となった時代ですが、5800がこのブームの一翼を担ったのは言うまでもないでしょう。