【超ネタバレ注意】矢口にデレる赤坂――シン・ゴジラ最大の人間ドラマはここにある!

赤坂の態度はどこで変化したか?

しかし、2人の関係にターニングポイントが訪れます。それが、「国連による熱核攻撃の決定」です。

これ、実は赤坂にも責任の一端があります。カヨコが里見臨時総理にゴジラの日米共同管理の提案をしに来た際、赤坂は政府の意思決定の場に米国の武官を置くことを断り、かわりに巨災対に米国の調査団を合流させました(また矢口に押し付け!)。で、この調査団、ゴジラの現状を把握すると「人類の英知の火しかないわ」と判断してさっさと退場しちゃうんですよね。そこから一気に熱核攻撃の流れに。まぁ、赤坂の差配がなくても、いずれはそういう結論が出たでしょうが……。

里見臨時総理は、官房長官代理となった赤坂に、国連の計画に日本が全面的に協力することを総理に一任する法案の作成を依頼。ここで赤坂は「東京への熱核兵器の使用の容認も、ですか?」と、作中で唯一の動揺を見せました。赤坂だって、本心ではそんなものは受け入れたくないのです。

続くシーンでは、気持ちを切り替えた赤坂が、矢口に巨大不明生物駆除後のビジョンを語ります。熱核攻撃なら、国際社会からの同情と融資を得られる。もし独自に作戦を行えば、それは期待できなくなってしまう。しかも、作戦が失敗すれば結局熱核攻撃になるわけで、国際社会からの評価は散々でしょう。いつもの赤坂の、冷静な計算です。「矢口、夢ではなく、現実を見て考えろ」と。

ただ、赤坂は矢口にこうも言いました。

「お前のプランにはまだ不確定要素が残っている」

あれ?

これって、今までのような、頭ごなしの否定ではありませんよね。課題を与えるということは、ちょっと矢口を認め始めている? 本心では弱気になっているから?

さて、不確定要素とはなんでしょうか。

それは「原子変換細胞膜が、経口投与した血液凝固剤をも無効化してしまうのでは?」ということ。その後、間准教授のヒラメキと巨災対のがんばり、そして世界の研究者たちの協力によって、牧元教授の遺した解析表の正体が判明。それは細胞膜の活動を抑制する極限環境微生物の分子構造でした。血液凝固剤と抑制剤を同時に投与すれば……いけますよこれ!

というわけで、矢口は赤坂の出した課題をクリアできました。

「総理、そろそろお好きになさったらいかがですか?」の意味

さあ、お膳立てが整ってきました。

矢口はやれるだけのことをやった。しかし最後の判断をできる立場ではない。日本では、それは総理が決めるのです。

続くシーンでは、矢口とカヨコが牧元教授について語り合います。カヨコは「あなたに好きにしてみろと。でも、この国で好きを通すのは難しい」とつぶやく。それに対する矢口のセリフは「ああ、僕1人じゃな」でした。だから、味方を集めてみんなで「好き」を通すのです。そして泉に任せて自分が出しゃばらないという判断は、正直、矢口カッコいいとしか言いようがありません。

総理執務室で、泉が矢口プラン実行のため、里見臨時総理を説得しています。もちろん、総理だって熱核攻撃は避けたい。でもすでに安保理案を受け入れちゃったしなあと渋る総理。ここで決定的な一言が、赤坂より発せられます。

「総理、そろそろお好きになさったらいかがですか?」

赤坂はこのとき、安保理案の堅持を主張することもできました。そして、これまでの赤坂ならば、そのように判断してもおかしくありません。赤坂が矢口プランに反対すれば、たぶんヤシオリ作戦は行われなかったでしょう。

では、なぜ赤坂は総理に好きにするように勧めたのか?

もちろん、赤坂にも熱核攻撃は避けたいという本音があるでしょう。しかしそれだけではなく、赤坂は、何度突き放しても食らいついてくる矢口を、課題をきっちりクリアした矢口を、「認めよう」とこのとき決意したのではないでしょうか。矢口の前に立ちふさがるのではなく、矢口の背中を押す「味方」になろうと。

つまりここは、表面上は総理に向けたセリフですが、

「矢口、おまえの好きにしていいよ」

と言っているのと同義! なの! です!

それを矢口に直接言わないなんて……とんだツンデレですなこの男!

はい、読者がドン引きしている音が聞こえるような気がします。が、私の話はまだ終わりではありません。最大の問題が残っています。

赤坂は結局、矢口に直接デレないのか?

はい、これです。もちろん、そのシーンはありまぁす!

練馬駐屯地にて。作戦を終えて戻ってきた矢口にご苦労だったと声をかけ、赤坂は今後について話します。

巨大生物関連法案の整備が終わったら、内閣は総辞職。そして総選挙。「それは赤坂さんのシナリオですか」と聞く矢口に対し、「いいや、すべて里見さんのシナリオだ」と返す赤坂。

これは、映画の前半にもあった“段取りをきっちり踏む日本の政治あるあるネタ”として、観客にニヤリとしてもらいながら、日常に戻りつつあることを伝えるシーンのようにも見えます。

ただ、赤坂は「せっかく崩壊した首都と政府だ。まともに機能する形に作り変えるさ」「これからの日本を導くための新しい内閣が必要だからな」と、選挙に勝つ気も、内閣入りする気も満々。

では、なぜそれを矢口に語るのか?

もちろん、「オレと一緒に次の内閣をやろうぜ」という、プロポーズに決まっています!

当初は親の威光をかさに横紙破りばかりやる若造の矢口を疎んでいた赤坂。

しかし今回の1件で、矢口は人をうまく使い、見事に作戦をやり遂げました。人として成長し、政治家としても成長した矢口(当然、次の選挙でも当選するでしょう)。それを赤坂は評価し、受け入れたのではないでしょうか。

というわけで、「矢口にデレる赤坂」こそが、『シン・ゴジラ』最大の人間ドラマだと思うのです。

……この話にノレなかった人、ごめんなさい!(安田風に)

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