【連載】死闘!アイドル聖地巡礼修行者たちの足跡(90年代〜00年代編)

聖地巡礼マニアックス

「だって、場所がわかったから行くぞって言われたら行くしかないじゃないですか?」Tは筆者にこう言った。Tは、表向きは大学を就職浪人していることにして、サムライのBerryz工房追っかけに同行するという、人生を棒に振りまくった生活を過ごしていた。

06年の3月から始まった「Berryz工房コンサートツアー2006春 ~にょきにょきチャンピオン!~」で売られていたビデオで、メンバーがどこかのハウススタジオに行ってカレーを作ったり庭でバトミントンをしたり、山で追いかけっこをする映像を見て「ここは行きたいよね」という意見でまとまった二人は、ほかに「地理ヲタ」を自称する“ヲタモダチ”(ヲタの友人のことをこう呼んだ。オタクになるくらいだから、アイドル以外にも謎の知識を持っている人も多い)の助力を得て、烏帽子岩の形から千葉の外房にある太東らしいと判断。

「その前から、レインボーブリッジを渡るロケバスの方向から千葉のほうだろうとは目星がついていましたけど、これで決心が固まりました」という。Google Mapなどまだできていない頃だ。画像検索でアタリをつけて、間違いないと判断したそうだ。

彼らの主観では「十分な情報」だが、普通に考えると、どう考えても無謀で頼りない「噂」レベルでサクッと行動できるフットワークの良さは、他のオタと差をつけるに必須のスキルだ。

当時秋葉原で行われていた、たこ焼き屋「Bowls Ball B.B.」で、購入するともらえるハロプロメンバートランプ抽選券を得るために朝10時に秋葉原集合。朝・昼ごはんに4人前のたこ焼きを購入し、準備万端。長い散策の1日が始まった。

1時間半ほど電車に揺られて、太東駅に着いた二人を待っていたのは、海の気配も潮の香りもしない農村。「駅前にあるデカイ地図を見て、海があるっていうのは認識できるんですけど、周りには民家と山、畑しか見えなくて不安でした。でも、方向は把握できたので、歩き始めたんです」。なんかかっこいい。

電車で来るくらいだから、もちろん車などは持っていないのだが、免許もなくてレンタカーは使えない。そのうえ、キャッシングでおっかけからバイト代で返済の自転車操業を繰り返していた貧乏学生のTと、それよりお金のないサムライのふたりには、タクシーを使う予算はない。

とにかく、生まれて初めて降りた駅から海に向かって歩いて行く二人。「20分くらいあるいて、そろそろ海かなと思ったら、なぜか山登りみたいになっていったんですよね。でも、釣具屋があったので、この先に海があるはずと信じて、とにかく登りました。それからさらに20分くらい歩いて、ようやく海が見えたときは感動しましたよ」。なるほど、こうして聖地を見つけているのだなと思ったら、これはまだ1/4にも達していないという。

聖地巡礼で水浸しに……

「とりあえず、砂浜まで降りて海に向かって叫んだんですよ。Berryzがやってたから。ちょうどその日は海が荒れてて、いきなりひざ上まで波がザッパーンって。まだスタジオを探さないといけないし、命の次の次くらいに写真は大事でしたからね。濡らさないようにバンザイの姿勢ですよ。もう、為す術はありませんでした」。

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(なすすべなしでネジ式みたいになってる。モデルはサムライ氏)

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