【おすすめWebマンガ】なのな フォト ゴロー(森下裕美) 〜 ネコでつながる、現代人のリアルな悲喜劇。『少年アシベ』作者描くハートフル4コマ
日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはい え、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!
森下裕美『なのな フォト ゴロー』 WEBコミックアクション
夢もなく、金もなく、毎日をぐだぐだと過ごしている食品工場勤めの独身男・ゴロー。同僚の女性には疎まれ気味だし、職場のロッカーはずっと壊れたままで、なにかとツイてない。友達といえば、三十を過ぎて漫画家志望(萌え絵描き)の鍬田君ぐらいしかいない。
古アパートと工場を行き来する日々の癒やしは、いつもバス停に迎えに来てくれる可愛いネコ、フォトちゃんの存在だけ。ところが、そんなフォトちゃんを通りすがりの女の子、阿木七乃菜(なのな)に取られてしまった!
田舎出身のオーナー夫婦が開いた小さな西荻窪的オシャレ雑貨屋に勤めるなのなは、人の夢に乗っかりながらぼんやりと生きている、ちょっとささくれた女の子。不細工でデブでオドオドしてるゴローのことは嫌いだけど、寂しさを紛らわしてくれるフォトちゃんに会いたいから、ゴローにもちょっとは優しく接してやることに。
そんな奇妙な出会いを果たしたふたりのキャットシェアリングな日常は、とりたてて楽しくも美しくもない。ゴローは職場で同じく孤立した仲野さんの書きあぐねている小説の構想語りや、鍬田君のワナビ談義に付き合ったり、なのなの雑貨屋は家出してきた店長母のオバハンセンスで店構えを台無しにされたり……。
将来の見えない不安と焦燥感、人付き合いのしがらみに晒される世知辛い生活のなかで、それでもふたりは周囲の人々と徐々に小さな幸せを見つけていく。俗っぽい登場人物たちが悲喜こもごもに生きる群像劇が、お涙頂戴ではない適度な温度感を保ちつつ、「こんなやつ、俺の周りにもいるわ」というおかしみを誘うリアリティで描かれていく。
孤独な現代人のあり方をときに突き放し、ときに優しく見守るようなヒューマンドラマは、そばに寄り添うネコのフォトちゃんから見たような距離感の読み味が心地よい。柔らかな絵柄と巧みな4コマの間の取り方にも、『少年アシベ』で知られるベテラン・森下裕美らしい確かな演出力がうかがえる。
フォトちゃんだけが接点の腐れ縁、ゴローとなのなの関係はこの先どうなっていくのか? 恋愛ものというにはシビアなテイストのマンガですが、フォトちゃんのキュートさでネコ漫画としても楽しめるおすすめの逸品です!
『なのな フォト ゴロー』掲載情報
・作者:森下裕美
・掲載メディア:WEBコミックアクション
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