コストコの電気小物コーナーで『USB WALL 2PK』というUSB充電ポート付きのACアダプタが販売されています。
なんとなく便利そうな気がするし、2個セットで1,998円(税込)という価格もお得な気がする。こういう機能を持ったACアダプタが必要な人にとっては即買い製品なのだとは思いますが、中身はどんなもんでしょうか? 念のためガチ検証してみましたよ!(編集部)
検証|ハンダマスターかしま
電源タップの主なチェックポイント
ガワの厚みは十分か?
ガワ(ケース)の装甲が厚く、絶縁性に優れ、頑丈かをチェック。電源タップは足もとに置くものなので、うっかり踏んでも簡単には壊れないくらいの強度がほしい。
太く低抵抗の導線で配線されているか?
スマホの充電程度なら多少いい加減な構造でも大丈夫かも知れないが、大電力機器を使用した時には発熱や電圧低下の原因になる。
はんだを使用していないか?
はんだは銅よりも電気抵抗が高く、240℃以上で溶け始めるため、電力配線にはなるべく使わないほうがよい。金属部の接合にはんだを使うのは簡単かつ接触不良を低減できる手段だが、大電力を使った場合、過熱によってはんだが溶け落ち、周辺の部品と接触してショートするなどの原因となりうる。はんだを使わない製品では、ネジ留めや圧着による接合方法が採用されている。
接触・可動箇所は最小限か?(電気抵抗)
壁コンセントとタップの口までの間のスナップ式コンセント、ON/OFFスイッチ、サーキットブレーカーなどはなるべく無いほうがよい。 接触部は導電部の何百倍もの電気抵抗があり、発熱や電圧低下の原因となる。電気抵抗は、ショート状態にしたプラグを一箇所挿し込み、タップのプラグ両端を4線式抵抗計で計測。
では検証を。
ファーゴ USB WALL 2PK|1,998円(2個セット)
プラグが2個あるが、折りたたみ式プラグは通電せずに、固定用として使われる。
内部
負荷テスト(USB)
4.5V を下回るタイミングをチェック。
リップル電圧(ノイズ)
電源が発するノイズを検証。充電時のリップル電圧をリアルに測定するため、充電時と同じ 2.0A の抵抗負荷を与えた時のリップル電圧(ノイズ)をオシロスコープで計測した。ノイズが大きいと充電中の音楽再生に影響する可能性もある。
検証結果
■電源タップ部
- 口数 2
- プラグ 固定
※通電しない折りたたみプラグも1個あり(コンセントに固定するため) - スイッチ なし
- ランプ LED
- はんだ付け あり
- 内部導体 3.9mm × 0.45t
- コード断面積 (直結)
- 抵抗値 11.1mΩ(コード長 0m)
- ガワ厚み 2.0mm ねじれ強度 ◯
- ブレーカー なし
- サージアブソーバ あり
■USB充電器部
- ポート数 2
- コントローラ TI UCC24610D
- USB固定 はんだ穴2個所 強度◯
- 2.0A負荷時電圧 4.82V
- 充電識別
- 左ポート Apple 2.4A固定
- 右ポート short
- 最大出力(ポート合計)
- 公称値 3.4A
- 4.5V降下時 4.09A
※片側最大2.19A - 保護切断時 4.19A
- 2.0A負荷リップル電圧 83mV
総合評価 ★★★☆☆(3.0)
結論からいえば、“積極的にはおすすめしない” 電源タップだろう。
壁コンセントに接続するタイプのUSBポート付きACアダプタ。電源タップ部は平凡な出来なので、USB充電器部分について確認しておこう。
■左右ポートで充電識別が違う
USBポートは2個搭載されており、各ポートで充電識別の設定が異なっている。左側が Apple 2.4A固定、右側が short となっていた。この点についてはパッケージの説明書きにはどこにも記載されていなかった。
出力は、ポート合計が公称3.4Aに対し、4.5V降下ラインが4.09A、保護切断ラインが4.19A。一方に2.0A負荷を加えた状態の底上げテストも確認したところ、もう一方のポートの4.5V降下ラインは2.19Aだった。とくに問題はないだろう。
リップル電圧(ノイズ)は、2.0A充電時が 83mV(RMS)、994mV(P-P)と高め。 電源基板の収納部には余裕があるので、もっと大きめのコンデンサを採用するなど平滑回路を強力にしていれば印象も違ったのだが……。
■“この形が欲しい”なら
製品自体は大きな問題があるというものではないが、とくに惹かれる部分もない。充電中のスマホスタンドにもなるという利便性も推しているものの、いまひとつ実用性を見出だせない。形状もやや特殊なので、こういうスタイルのACアダプタが欲しかったという人以外におすすめできるポイントはなさそうだ。
▲スマホスタンドとして使う例。スマートじゃない気が……。
※本企画の検証結果はすべての商品で同様の結果を保証するものではありません。個体差等により結果が異なる可能性を踏まえたうえで、購入する際の一材料として参考にしていただければと思います。また分解等の検証は専門知識を持つ者が行なっております。真似しないようご注意ください。